侯爵夫人の復讐
「旦那さま、3年前にキャリーという女性にしつこく付きまとい、振られた腹いせに家を燃やしましたね?」
デリーがあきらかに動揺した。
「な、何のことだ……?」
「その方は亡くなりました」
デリーはぎょろりとした目で制止する。
キルアは拳を握りしめ、怒りを何とか抑えながら言い放つ。
「人を殺した罪はご自分の身をもって償ってください」
デリーが急に震えだしたので、義母が不可解な表情で詰め寄った。
「デリー? どういうことなの? 家を燃やした? 殺したですって?」
「ち、違う……あれは、あの女が悪いんだ……俺を、無視したから……」
デリーは狼狽えながらキルアに訴える。
「俺は彼女を説得しただけだ。ちょっと手で押したら彼女が照明にぶつかって布団に燃え移ったんだ。俺だって命がけで逃げたんだからな」
微笑を浮かべながら言いわけをするデリーを、キルアは冷たく見下ろす。
「そんなことより、キルア。離縁するなんて言わないでくれよ。俺はこの身体じゃ仕事ができない。お前が必要なんだよ。これからはお前のことだけを愛してやる。もう愛人を持ったりしないから安心していい。とにかく離縁だけはやめてくれ」
キルアは怒りを通り越して呆れた。
苦笑いを浮かべながら蔑むようにデリーを見据える。
「すごいですね、旦那さまは」
「は……?」
「今までしてきたことを考えたら、そこまで図々しいことを普通の感覚では言えないと思うんですが」
「謝れと言うなら謝ってやる。すまなかった。だからここにいてくれ。君が必要なんだ!」
最後はまるで愛の告白でもするように、デリーは満面の笑みでキルアに言った。
だが、キルアにとって茶番でしかない。
「犯罪者とこれ以上一緒に暮らしたくありませんので」
「お前がどう言おうと、証拠がないだろう」
「ええ、証拠はありません。なので、確実にあなたを殺人犯で捕えていただくことは難しいでしょう。ですが、もういいのです」
「な、何が……?」
不安げな表情のデリーに、キルアは冷めた目を向けて言い放つ。
「この家は没落しますから」
デリーと義両親は驚愕の表情で固まった。