佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「佐藤さんのお願いなら、契約しようかな」
(そんなに簡単に決めていいの?)
大抵の人は、家に持ち帰る案件なのだが…
思わず耳打ちするように声をひそめて話す。
『簡単に決めて大丈夫ですか?こちらはお客様の契約を取りたいというポーズだけで、無理しなくていいですよ』
『大丈夫、お隣さんだからね、信じてるよ』
よく言う、ストーカー扱いしたくせにと恨めしく睨んでしまった。
微笑む男には、しおりの睨みなど痛くもなく、逆に『可愛いな』と思わせていた。
「ありがとうございます。後、データ移行はこちらで致しますと料金が発生しますが、どうされますか?」
「佐藤さんがしてくれるの?」
「はい、そうですが、写真などデータ紛失等ございましても責任は取れませんのでご了承下さい」
「じゃあ、自分でするからいいよ」
「では、SIMを入れ替えますので、お客様の携帯をお預かりします。その間、こちらとこちらの契約書にお客様のお名前のご記入をお願いします」
その後、手続きを終えて東雲を見送って閉店作業に取り掛かるのだが。
「あの東雲って人、かっこよかったですね。しおりさんにグイグイ行ってましたけど、電話番号渡されませんでした?」