佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「うそ。彼女なんて面倒って思ってるくせに。だから、勘違いさせることしないんでしょ」

「あぁ、面倒だよ。お前以外の女なんて、面倒なだけだ。分かれよ。合コン設定したのも、お前の気を引く為だ。勘違いしろ。友達なんかで満足するかよ。本気なんだよ」

ぎゅっと力強く掻き抱く零士は、腕の中で戸惑い震えるしおりを困らせる。

「…辰巳さんが好きなの。簡単に気持ちは変わらない」

「わかってる。そんなお前だから、惹かれてるし、ますます惚れた。待つから…お前の眼中に俺も入れろ。誤魔化すな」

「眼中?」

「隣人じゃなく、男として俺を意識しろ」

「…」

「ちょっとは、意識できたか?」

「卑怯よ。そんないい顔で言われたら、誰だって…」

辰巳を思い、泣いていたはずなのに、しおりの思考にいるのは、今は東雲しかいない。

「好きな女の心に俺の入る隙間ができたんだ。俺を意識してくれるなら、利用できるものは利用するさ」

「ふん、無駄骨にならないといいわね」

「ほんと、顔を赤くしてそういうこというお前、可愛いよ」

「もう…さっきから、彼氏でもないのにお前呼びやめて」

照れて、気になっていた呼び方を注意する。
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