佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
仕事を終えると、しおりの心は滅入っていくばかりで、道中、とぼとぼと歩いていた。
後ろから、肩を叩かれ驚かされる。
「よっ、今帰りか?」
「東雲さん、驚かさないでよ」
「呼んでも気がつかなったからだぜ」
「えっ、考えごとしてたからかな?」
「ふーん。あっ、しおり、ご飯食べた?」
「まだ…」
「ならさ、ラーメン食べに行かないか?」
「ラーメン?」
「嫌ならいいけど。やっぱ、イタリアンとかがいいか?」
「嫌じゃないよ。ラーメン大好き」
先程まで暗い表情だったしおりに笑顔が戻り、東雲はホッとしたように会話を続け歩いていく。
「この近くに美味しいとこあるんだ。俺のお勧めは、野菜たっぷりの白味噌ラーメン」
「白味噌ラーメン?」
「白味噌の優しい甘さと豚骨スープが絶妙でさ、赤唐辛子味噌を少しずつ溶かして食べると最高に美味いんだよ」
「東雲さんがそんな顔するなんて、よっぽど好きなんだね」
「あの味を知ったら、他の店の味噌ラーメンなんて、もう、食べれないぜ」
ちょっと、興奮した声になる東雲に、しおりはクスリと笑い、新たな東雲の一面に好感が上がっていった。
そして、零士の方も、他の女のように、イタリアンとかがいいと言わないしおりの飾らなさに益々、好きになっていた。