佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
どの女もラーメンと誘えば、嫌な顔をするからだ。
「しおりと初めてのデートがラーメンで、ごめんな」
「…で、デート⁈ただの食事でしょ」
「あはは、そうだな。いつかは、ほんとにデートしたいな」
一歩前に出て、後ろ歩きで無邪気に笑う東雲に、しおりの弱っている心は、早鐘を打ったように大きく鳴っていた。
「…危ないから、前見て」
いっぱいいっぱいなしおりは、そう言うのが精一杯。
体の向きを変えて、少し前を歩く東雲の背中を見つめながら、辰巳とこうして外を一緒に歩くことがなかったなぁと思いだす。
「ほら、渡るぞ」
車の通りが多い大きな道路の反対側に行こうと、横断歩道もない場所で横切ろうとたくらむ東雲は、しおりの手を自然と繋ぎ駆け足になるので、一緒に渡ってしまう。
左右から車が来ないタイミングだったとはいえ、危ない。
「…もう、危ないことしないで」
ヒヤヒヤしながら走り、渡りきったしおりの心臓はバクバクとしている。
それは危なかったからか、繋がれた手のせいなのか…
「悪い、渡った方が近いんだ」
「だからって」
「スリルあったな、あはは」
そういい軽やかに笑い、繋がれた手は離れていった。