佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
しおりの頭の中から、辰巳のことなんて吹き飛んでいて、先程まで繋がれていた手の温もりがない物足りなさを、ぎゅっと爪が手のひらに食い込むように握り込んで、東雲の後を追いかけた。
東雲の言う通り、渡ってすぐに大きな看板が見えてくる。
「お腹空いた。早く行こう」
もう、目の前だというのに、待ちきれないと歩くスピードを上げる東雲に、しおりは苦笑し、追いかけた。
「いらっしゃいませ」
店主の掛け声と従業員の声が店内を響かせる。
店内は賑わっていて、カウンター席しか空いてなく、並んで座りメニューを一緒に見ることで、顔が近寄りどきりとする。
「俺は、野菜大盛りの白味噌ラーメンとライス」
「私は、普通の野菜白味噌ラーメン」
「はい、しばらくお待ちください」
従業員さんは、そういい厨房へオーダーを伝えにいった。
「そういえば、加賀さんと香織。うまくいきそうね」
「あぁ、確か、ちょっと前に食事行くって聞いたな」
「そう、この間2人で食事してきて、交際申し込まれたって喜んでた。東雲さんにもいい人紹介してくれてありがとうって伝えてって言ってたよ」
「んっ、…まぁ、感謝されるほどでもないよ」