佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「そんな道があったんですね。ありがとうございます」
「いーえ。どういたしまして。こっちこそ勘違いして悪かったな。お詫びにこれやるよ」
コンビニ袋から、取り出したおにぎりは、海老マヨだった。
「えっ、いいんですか?」
「おにぎりの棚で悩んでたの、あんただろ」
「あっ、横から取ってた人⁈」
「そう。街からストーカー女がコンビニ中までついて来たのかと苛立ってて、どんな奴なのかと顔見るついでに取ってた」
「同じ方向だっただけで後つけてないんですけど」
「ほんと、勘違いして悪かったよ」
ジト目で見あげたら、申し訳なさそうに目尻を下げた男。
おにぎりには、非は無いので頂くことに。
「ありがとうございます。大好きなんです」
今日のついてなさいも、海老マヨをゲットできたことで報われる気がして微笑むしおりに、男は、目が離せないで見ていた。
だが、ふと我に帰り慌てて奥の部屋のドアまで歩いて行き、鍵を開けて、ドアを開ける手前でしおりを振り返る。
男の心に、何かしらの感情が芽生えていたが、それが何なのかは、本人も気がつかない。
ただ、(可愛い笑顔だなぁ)と。
「じゃあな、お隣さん」
「あっ、はい。おやすみなさい」
「…おやすみ」
しおりと隣人、東雲 零士との出会いだった。