佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「…ふ、ふふふ。そこは遠慮して、そんなことないって普通言いますよ」
「笑うなよ。謙虚なんて、無意味だろ。実際、俺、女に困ったことないし」
「あっ、そうでしょうね。無自覚に男性ホルモンばら撒いてそうです」
「言うね。おもしれーな」
なだらか坂を上がり、広い道に出てきた。
「あっ、あの道教えてくださってありがとうございました。すごく楽になりました」
「いーえ。どういたしまして」
「ここに2年住んでますけど、あんな道があるなんて全然知りませんでした」
「2年もいて知らないとかびっくりだわ。俺、去年越してきたけど、すぐにコンビニの店員に裏道教えてもらったぞ」
「マジですか。バカみたいに登り降りしてないで、私も誰かに聞けばよかったですね」
落ち込むしおりを見て、男は、なぜだがしおりが愛らしく感じていた。
「俺が教えてやっただろ」
「そうなんですけど…私の労力が。まぁ、おかげで体力がついたのでヨシとします」
「ポジティブだな、あんた、俺の周りにはいないタイプでおもしれーわ」
少し歩くとマンションが見えてくる。
「荷物持ってもらってありがとうございました」
受け取ろうとするしおりだが、男は、渡そうとしない。