シャロームの哀歌
 それからというもの、イザクの訪れは目に見えて減っていった。

 たまの用事で会えたとしても、触れるどころかミリの目を見ようともしてこない。やさしかったイザクは、会うたびに明らかにミリに対してそっけなくなった。

 きっと醜い傷跡を見られてしまったせいなのだろう。

(初めから住む世界が違うひとだったのよ)

 絶望の淵に追いやられ、それでもミリはイザクへの想いを消すことはできなかった。

 飢えに苦しむこともなく、あたたかな布団で横になることも毎日できる。ミリがこうして日々を過ごせるのは、イザクが援助を続けてくれるからだ。

 だから、恨んではいけない。

 (メレフ)も、賢人(ハハム)も、ミリの家族の犠牲の上でしあわせを享受している人々も。

 この平和になった世界で、イザクもまた生きているのだから。

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