願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
「景春 様は……不器用な方でございますね」
「そうだな……そうかもしれない」
顎に手をあてて考える素振りを見せる景春 様の横顔は、どこか遠くを見ているかのようでした。
憂いを秘めたそのお顔に胸がろうそくの灯火のごとくチリリと痛みました。
「だがお前ほどではない」
意地悪く口角を上げると、景春 様は再び畳の上に寝転びました。
目を閉じると長い睫毛が顔に影を作り、それが妙に切ないもので、手を伸ばして触れてしまいそうになりました。
その手を引き戻し、私は咳払いをするとまた夜空に輝く月へと目を向けます。
それから景春 様が訪れるたびに、一言二言言葉を交えてはただ黙って夜を過ごすようになりました。
共に過ごしていくうちに、景春 様が真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐなだけな方とわかりました。
言葉に棘があるように聞こえるが、ただ思ったことを率直に言っているだけであって悪気がまったくないということ。
無口で眉間に皺を寄せてることも多いが、特別怒ってというわけではないこと。
また無下にしているわけではないと、黙って頭を撫でてくることが景春 様なりの親睦だということもわかりました。
なんと不器用なことなのかと思うと笑みが溢れ、最初に出会ったときほど景春 様に対して不快になることは少なくなりました。
その分、欠けた月を刺激されることは増え、私は胸に手を当てて違和感について考えることも増えておりました。