願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
ある夜明けのこと、突如聞こえてきた悲鳴を耳にし、その声の元へと駆け寄ります。

多くの女郎が集まっており、私はそれをかき分けて奥へと進みました。

そこには血まみれになった男女の遺体がありました。


「あぁ……なんてこと。間夫に入れ込んでこんな……」

「……また、なのね」

「菊月?」


あぁ、目眩がする。

どいつもこいつも色恋に溺れて簡単に自分を捨てていく。

まるでそれが幸せだといわんばかりの顔してみんな笑っていられるのか。

どうして誰かを愛することができる。愛される自分の姿なんて見えやしない。

上へ上り詰めても満たされない。腹が立つ。

唇をギリッと強く噛み、赤く染め上げながら私はその場を立ち去りました。


その夜、景春 様が何食わぬ顔で訪れるのだから私の苛々は中々収まりませんでした。

もちろんそんな私事を表に出すことは出来ません。



いつも以上に化粧を厚く塗り、笑顔を貼り付けて景春 様に近寄りました。



「そんな顔で近づくな」



深々と眉間に皺をよせ、私の額を押して遠ざけようとします。

不愛想なその態度に思わず気を緩めてしまい、泣きそうな表情を浮かべてしまいます。

だがそれは女郎として生きてきた自分を否定してしまうような気がして、すぐに振り払いました。


それは景春 様にとってはすぐにわかってしまうことだったようで、不機嫌な顔のまま私の肩を押し、畳の上に倒してきました。

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