願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。



「お前は……いつもつまらない顔をしている」

「なにを……言うんでありますか」

「だからつまらないんだ。面ばかり付けていて、お前はどこにもいない」

「……だったらなんですか」


あぁ、腹が立つ。

むかむかする。


張りつめていた糸が切れる音が聞こえたと思ったらもう私は感情を止める事が出来ませんでした。



「こうでもしなきゃ生きていけない! 本当の私なんてとっくに死んじまいましたよ! ここで生きていくには仮面をかぶっていかなくてはなりません! 誰がっ……誰がこんな私を受け入れてくれるというのですか!」



間夫に入れ込んだ女郎たちはみんながみんなして幸せそうな顔をしていた。

本当に男たちが私たち女郎を愛しているとでも思っているのだろうか。

誰一人私たち女郎一人ひとりを見てなんていない。



私たちは自分で自分を守らなくてはならない。

誰も守ってくれない。

愛し愛されての関係なんぞ夢のまた夢。

私たちの役割は偽りの愛をささやく事。

身体は道具のように扱われ、心は偽って笑うばかり。

そうして壊れてしまう時を待つばかり。



男には極楽浄土。

はたまた女には地獄。


それが私たちの生きる世界なのです。


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