願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。


「だからお前はつまらないんだ」

「まだ言うか、この鬼畜」

「お前をはじめて見たとき、生きづらそうな面をしてると思ったんだ。関わってみれば尚更そうだと思った。お前は誰よりも愛に飢えている。そうではないか?」

「私は……私はっ……」


認めたくなかった。

姉女郎は間夫のことを語る時、乙女のような愛らしい顔をしていました。

頬を薄紅色に染め上げて、嬉しそうに目を細めて笑うのです。

同時に姉女郎は隠れて泣いていることもありました。

悲しい想いをするのに幸せそうに笑う姉女郎がわからなかった。

間夫なんて作ってしまったらこの苦界では生きにくくなるとわかっているのに、どうして簡単に愛を囁けてしまえるのかと。



私は間夫なんて作らない。

自分ひとりで生き抜いてみせる。

そう思ってこれまで生きてきました。

それが私の誇りであり、自信でもありました。

なのに涙が出るのは……本当は誰よりも寂しかったからなのだろうか。

あの姉女郎に嫉妬をしていたのだ。

誰かを愛する喜びを知り、女になった姿を誰よりも。


「……ひとつ、俺の身の上話でもしてみようか」

「景春 様の……」

「気が向いただけだ。聞き流して構わない」


そう言って景春 様は私の隣に寝ころび、私の頭の下に腕を敷くとそのまま身体を抱き寄せてきます。

その温もりがやさしくて私は目を閉じ、そっとその身に任せるのでした。



「俺には……許嫁がいた」

「許嫁……」

「小夜という娘だった。身体の弱い娘で、あまり外に出る事がなかった」


親同士が決めた結婚であり、幼い頃から仲良くしていた。

景春なりに大切にしようと思っており、大切に出来ていたと思っていた。

だが実際、小夜を一人にすることが多く寂しい想いをさせていた。

そんな思いをさせていたことに気づいたときにはもう手遅れであった。

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