死神?・・は・・・私の・・・?
1週間後、麗香が診察を終え部屋を出る準備をしているときだった。
「先生、田無さんが一目お会いしたいといらしてます。」
看護婦が少し不安そうな顔で麗香に言った。
「わかりました。いいわよ。診察室にお通しして。」
田無夫人は麗香を見ると深々と頭を下げた。麗香も頭を下げ、夫人に椅子をすすめた。
「田無さん、この度はご愁傷さまでした。お疲れになったでしょ。」
「先生も診察が終わってお疲れのところ申し訳ございません。どうしても先生にお話ししたくて来てしまいました。あの・・・私がここに入院させていただいて1日家を空けて帰ったら、主人はよく寝ていたのです。私は少しホッとしながらもいつものように久美ちゃんと昼のご飯を作りましたが、昼になっても主人は起きませんでした。そして夕方になっても。陽が傾きはじめたので雨戸を閉めて、主人のベッドサイドの灯りを付けたのです。6時頃だったと思います。すると主人が目を覚まして、“芳江・・・悪かったな。怪我は痛むか?”って優しく言ってくれたのです。だから、“大丈夫ですよ”と答えました。すると、“本当に今迄すまなかった。迷惑かけた。ありがとう。”と・・・。昔のような優しい口調でした。そして、またスーッと眠りについたのです。夜、8時になっても主人が起きないので覗き込むと既に息をしていませんでした。あまりの急なことでその時は動揺もしました。主人の死も悲しいです。でも、あの言葉があったので溜飲が下がったというか、今は落ち着いています。」
「そうでしたか。帰られた後直ぐにご主人が亡くなられたと聞きましたので、どうなさったかなって心配していました。」
「先生が、1日泊まっていきなさいって言ってくださったから、主人のあの言葉を引き出せたのだと思います。ありがとうございました。」
「ご主人の本心だったと思いますよ。どうしても大病をすると患者は我儘になるのです。奥様に甘えていたのですよ。」
「そうなんですかね。まったく、子供以上に手がかかりました。私も早く逝って欲しいなんて思ってしまったこともありましたが、でも、ホント・・・あの言葉があるのでこれからも生きていけます。」
「お疲れさまでした。田無さんがお元気そうでよかったです。お一人になられてこのあとはどうなさるのですか?」
「当分はゆっくりと昔を懐かしみながら家を片付けます。その後は娘が一緒に暮らさないかって言ってくれていますので、そうさせてもらおうかと思っています。」
「それは良かったですね。」
「はい。本当にありがとうございました。先生のおかげです。先生もくれぐれもお身体お大事になさってください。」
田無夫人は何度も麗香に頭を下げて帰って行った。
『スティル! スティル! 居るんでしょ?』
『はい。どうしました? なんだかご機嫌ですね。』
『今日ね、田無夫人が、お礼に来てくれたの。あなたのおかげ。』
『えっ?』
『ご主人にお礼言われたって、それを嬉しそうに話してくれた。最期にその言葉が聞けて良かったって・・・』
『そうでしたか・・・』
『ねー、スティルはどうご主人に話したの?』
『麗香さんの時と同じように、死期が近づいていていることを告げて、何かしておきたいことないかと聞きました。そうしたら、奥さんに怪我を負わしてしまったことと、日々つらくあたってしまったことを悔いていると言うから、“ちゃんとお礼を言ってあげてください”って、そう言って、ちょっと時間を作ってあげただけです。』
『ありがとう・・・』
『・・・死神にありがとうなんて・・・あのご主人からも、“迎えに来てくれてありがとう”。って言われて・・・』
『へー、照れてる? フフ。』
『褒められているんですかね・・・へんなの・・・』
『スティルはただの死神とは違うとは思っていたけど・・・それになんだか私にもやるべきことがあるのかなって・・・』
『僕意外の死神を知らないくせに、何言ってるんですかね、この人は・・・。でも、僕に紹介する人増やしてくれるってことですか?』
『時と場合かな・・・私の基本的な考え方は変わらない。医者だから・・・』
『そうですか・・・やっぱり・・・』
『何?』
『麗香さん、今日はちょっと行くところがあるからこれで・・・』
『えっ? 行っちゃうの? まだ話していたいのに・・・』
スティルは突然消えた。
― どうしたの???
「先生、田無さんが一目お会いしたいといらしてます。」
看護婦が少し不安そうな顔で麗香に言った。
「わかりました。いいわよ。診察室にお通しして。」
田無夫人は麗香を見ると深々と頭を下げた。麗香も頭を下げ、夫人に椅子をすすめた。
「田無さん、この度はご愁傷さまでした。お疲れになったでしょ。」
「先生も診察が終わってお疲れのところ申し訳ございません。どうしても先生にお話ししたくて来てしまいました。あの・・・私がここに入院させていただいて1日家を空けて帰ったら、主人はよく寝ていたのです。私は少しホッとしながらもいつものように久美ちゃんと昼のご飯を作りましたが、昼になっても主人は起きませんでした。そして夕方になっても。陽が傾きはじめたので雨戸を閉めて、主人のベッドサイドの灯りを付けたのです。6時頃だったと思います。すると主人が目を覚まして、“芳江・・・悪かったな。怪我は痛むか?”って優しく言ってくれたのです。だから、“大丈夫ですよ”と答えました。すると、“本当に今迄すまなかった。迷惑かけた。ありがとう。”と・・・。昔のような優しい口調でした。そして、またスーッと眠りについたのです。夜、8時になっても主人が起きないので覗き込むと既に息をしていませんでした。あまりの急なことでその時は動揺もしました。主人の死も悲しいです。でも、あの言葉があったので溜飲が下がったというか、今は落ち着いています。」
「そうでしたか。帰られた後直ぐにご主人が亡くなられたと聞きましたので、どうなさったかなって心配していました。」
「先生が、1日泊まっていきなさいって言ってくださったから、主人のあの言葉を引き出せたのだと思います。ありがとうございました。」
「ご主人の本心だったと思いますよ。どうしても大病をすると患者は我儘になるのです。奥様に甘えていたのですよ。」
「そうなんですかね。まったく、子供以上に手がかかりました。私も早く逝って欲しいなんて思ってしまったこともありましたが、でも、ホント・・・あの言葉があるのでこれからも生きていけます。」
「お疲れさまでした。田無さんがお元気そうでよかったです。お一人になられてこのあとはどうなさるのですか?」
「当分はゆっくりと昔を懐かしみながら家を片付けます。その後は娘が一緒に暮らさないかって言ってくれていますので、そうさせてもらおうかと思っています。」
「それは良かったですね。」
「はい。本当にありがとうございました。先生のおかげです。先生もくれぐれもお身体お大事になさってください。」
田無夫人は何度も麗香に頭を下げて帰って行った。
『スティル! スティル! 居るんでしょ?』
『はい。どうしました? なんだかご機嫌ですね。』
『今日ね、田無夫人が、お礼に来てくれたの。あなたのおかげ。』
『えっ?』
『ご主人にお礼言われたって、それを嬉しそうに話してくれた。最期にその言葉が聞けて良かったって・・・』
『そうでしたか・・・』
『ねー、スティルはどうご主人に話したの?』
『麗香さんの時と同じように、死期が近づいていていることを告げて、何かしておきたいことないかと聞きました。そうしたら、奥さんに怪我を負わしてしまったことと、日々つらくあたってしまったことを悔いていると言うから、“ちゃんとお礼を言ってあげてください”って、そう言って、ちょっと時間を作ってあげただけです。』
『ありがとう・・・』
『・・・死神にありがとうなんて・・・あのご主人からも、“迎えに来てくれてありがとう”。って言われて・・・』
『へー、照れてる? フフ。』
『褒められているんですかね・・・へんなの・・・』
『スティルはただの死神とは違うとは思っていたけど・・・それになんだか私にもやるべきことがあるのかなって・・・』
『僕意外の死神を知らないくせに、何言ってるんですかね、この人は・・・。でも、僕に紹介する人増やしてくれるってことですか?』
『時と場合かな・・・私の基本的な考え方は変わらない。医者だから・・・』
『そうですか・・・やっぱり・・・』
『何?』
『麗香さん、今日はちょっと行くところがあるからこれで・・・』
『えっ? 行っちゃうの? まだ話していたいのに・・・』
スティルは突然消えた。
― どうしたの???