死神?・・は・・・私の・・・?
それから間もなくして亨との離婚が成立した。
数日後、麗香は三枝を食事に誘った。
「三枝先生、急にお呼び出しして申し訳ございません。」
「麗香先生からのお誘いなら何を制してでもまいりますよ。」
「フフ、先生お上手。早速ですけど本題に入らせていただきますね。あの、噂でお聞きかもしれませんが、私、亨先生と離婚しまして亨先生はこの病院を去ることになりました。海外の病院に行かれ、さらに腕を磨くとのことです。それで、その空いた院長の席に三枝先生に付いて頂きたいのです。いかがでしょうか。」
「驚いた・・・離婚されたという噂は僕の耳にも入ってきました。急に何があったのかと皆噂をしていました。まあ、野暮なことは聞きません。それで院長の件ですが、麗香先生が院長になられると思っていましたよ。」
「私、人の上に立つとか人付き合いとか苦手なのです。ですからお願いしたいのです。」
「うーん・・・ありがたいお話です。でも、僕も決してそういうことが得意なわけではない。・・・条件出してもいいですか?」
「何でしょう。」
「麗香先生、僕と結婚してください。」
「えっ?・・・」
「女性は離婚してから6ヶ月経たないと再婚できない。ですから、3ヶ月くらいで考えてもらえませんか。その間は院長不在になってしまいますが、その間は麗香さんが代理を務めればいい。その時間でお互いのこと知り合うために出来る限りデートをしましょう。僕は、バツイチで離婚してから約10年一人でした。このまま年取って一人というのは寂しいし不安だとつくづく感じています。麗香さんもこの先一人だときっとそう思う日が来ますよ。それに僕はずっと麗香先生のファンだった。麗香先生が結婚すると聞いた時は正直、心が痛んだ。結構麗香先生に合図送っていたつもりだったんだけどな。どうでした? 気が付いていました?」
「すみません・・・全然気が付かないで・・・なんだか亨先生は父と仲良くなってしまって、結婚するように仕組まれてしまったというか・・・」
「そうですよね。なんか見て取れました。」
― うそ! 当時は年上の三枝先生のことを落ち着いていて、大人って感じで好きだった。思いっきり合図にも気が付いていましたよ・・・気が付かないふりをして、我慢していたのに・・・
― でも、今となっては・・・どうしよう・・・なんて答えたらよいのか・・・
「あの、三枝先生。私もう結婚する気はありません。跡取りを産むつもりもないのです。父や祖父が生きていたら怒られてしまうかもしれませんが、病院は取締役の一人としていさせて頂くだけで十分です。」
「麗香さん、あの・・・僕は籍だけ入っていればそれでいいのです。この先、どちらかが病気になっても大丈夫なように。手を差し伸べられるようにしたい。他人だと出来ないでしょ。僕、麗香さんが側にいるだけで満足ですから・・・麗香さんが嫌がることはしません。でも、麗香さんがして欲しいことには努力します。寝室だって別でいい。もう結婚したくないというお気持ちはわからないではない。でも、結論はもう少し先延ばしでいいのではないですか。じっくりと考えていただけませんか。」
麗香は三枝の言葉に揺れた。
― それって、結婚しても縛られないってことよね。院長も引き受けてくれて・・・私の老後? も安泰???
― 理想の結婚・・・???

『スティル、出て来て。』
『はい、ここに。』
『私どうしたらいいのか・・・』
『良かったじゃないですか。これで想い人と一緒になれる。』
『えっ・・・本当にそう思っているの? あなたからその言葉を聞くとは思っていなかったわ。』
『どうしてですか?僕との間柄はかわらない。』
『でも、結婚したらあなたと話すこういう時間が無くなる。』
『そうですね。激減するでしょうね。でもあなたは両方とも得れる。院長にならなくていいし、望めば子供も、そして安定も・・・さらに、必要なら僕の睡眠も確保できる。』
『そんな・・・』
『麗香さん、あなたにとっていいことづくめじゃないですか。最高の選択だと思いますよ。よかったですね。それじゃ・・・』
スティルは消えた。
『待って、スティル! 戻ってきて! 』
いくら呼んでもスティルは戻ってこなかった。
― 何が私の為よ・・・私は・・・私はスティルと居たい・・・
― せめて寝かしつけていきなさいよ!
― スティルのバカ・・・
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