その笑顔を守るために
「三ツ矢先生…次の患者さんお願い致します!」

本日、外来の担当を受け持つ三ツ矢は先日自身で内視鏡の検査をした患者の診察をしていた。傍らのデスクには、緊急オペに入った指導医から依頼された瑠唯が診療の様子を書類仕事をしながら見守っている。

「古谷さん、お加減いかがですか?その後痛みは引きました?」

「はぁーお薬頂いて痛みはだいぶ引いたんですが…なんかお腹が張るって言うか、引きつるって言うか…スッキリしなくってー」

「そうですか。痛みが引いたのなら、お薬が効いてると言う事です。…先日の検査の結果でも腸に軽い炎症が見られますから、もう少しこのままお薬続けてもらって…二週間出しますので、飲み終わった頃またいらして下さい。」

検査画像を観ながらそう伝えている。確かに画像上僅かな炎症が見られる。でも…瑠唯は何か引っかかる。患者さんの「引きつる」と言った言葉が耳に残った。

「じゃあ、ありがとうございました。」

「はい。お大事に。」

患者を送り出し、PCのカルテを打ち込んでいる三ツ矢に

「今の患者さん、血液検査は?」

「しましたよ。白血球数の数値が結構高かったですが、腸炎なんで、普通かと…何か?」

「ん?そっか、なら大丈夫だね。」

そう言うと、こっそり診察室を抜け出して受付に向かう。
会計にいた古谷を見つけて

「古谷さん!」

「あっ、原田先生…さっきはどうもー」

「古谷さん、お腹引きつるってどんな感じなんですか?」

「んーどんな感じって言っても…なんとなくって感じです。なんか他の事やってると気になんない程度?三ツ矢先生にもそのうち治るって言われましたし…」

「そうですか、もしまた痛みがぶり返したり、違和感が増したりしたら、夜間でも大丈夫なので直ぐ連絡くださいね。私、敷地内の寮にいるんで夜間でも駆けつけますから。」

「はい!ありがとうございます。」

そう言って、古谷は帰っていった。


数時間後…ようやく最期の外来患者を終えてそろそろ遅い昼食を取ろうかと思っていた頃…突然、瑠唯の胸元に振動音が響く。

「はい、外科、原田!」

『原田先生!今、ERに古谷聡さんとおっしゃる53歳の男性の方がいらしてて…激しい腹痛を訴えていらっしゃい…あっ、古谷さん大丈夫ですか?誰か!ストレッチャー持ってきて!』

「直ぐ行きます!」

「すみません!消化器外科の山川先生探してERに来てもらって!後、研修医の三ツ矢くんも!」

側にいた看護師にそう言いのこすと、直ぐ様駆け出した。




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