その笑顔を守るために
「おはようございます!」

翌朝、瑠唯が大野の病室に顔を出した。

「おお…今日は早いじゃないか!昨日はどうした?院長にこってり絞られたか?」

「絞られてなんかいませんよ!…娘のように大切に思ってくださってると言って頂きました。」

瑠唯はそう言うと、ベットの脇の椅子にポスンと腰を降ろした。

「よかったじゃねぇか。父親が出来たみたいで…」

「はい…なんかそんな感じで…少し、くすぐったいです。」

「大河原教授と松本教授、髙山院長は…昔から仲のいい友達でなぁ
…子供もそれぞれ歳の近い一人娘で、お互いに可愛かったんだろうな…お前の苦境を真っ先に知らせてきたのも髙山院長だ。その後、松本教授からも連絡もらって…俺がお前を引き受けた。アメリカに来た時のお前を見て驚いたよ。あんなに屈託無くはしゃきまわってたガキが、笑わなくなって…でも、大人の女になって…引き受けたはいいが、責任重大だと思った…」

「だからあんなに厳しかったんですか?」

「ああん?結構優しく指導したつもりだったんだがなぁ?」

「どこがですか?私、毎日泣いてましたから…褒めてもらったことだって一度も無いし…」

「そうだったかぁ?…だが、今回のオペはよくやった。さっき術後の画像見せてもらったが…見事に取りきってた。」

「…っ…先生、未だです…そのお褒めの言葉…先生が退院して、執刀医としてオペ室にたって、オペを成功させた時…その時…うんと褒めて下さい。」

「そうか…わかった!楽しみにしとけ!」

「はい…あっ、そういえば…カテーテル取れたんですね。師長ですか?」

「ちげーよ!しお…長谷川にやってもらった!」

そう言って横を向く大野の顔が心なしか赤い気がした瑠唯が、大野の耳元に顔を寄せて悪戯ぽく囁く。

「先生!結婚パーティー、やりましょうね。私、幹事やりますから。あっ、後それから…赤ちゃんは、治療が終わって、少なくとも半年たってからにしてくださいね!」

「ば、馬鹿な事言ってねぇでさっさと回診行って来い!」

スゲもなく病室を追い出された瑠唯だったが、何だかとっても楽しい気分だった。


その日の午後、瑠唯が食堂の何時もの席で休憩していると…

「瑠唯…今、昼食?」

「や、山川先生…こんな所で、そんな大きな声で、名前…呼ばないで下さい!」

「えっ?もういいんじゃない?瑠唯から愛の告白もらったし…取り敢えず今はそれで満足してるし…あっ、でも、気が変わったら何時でも言って!指輪も婚姻届も何時でも用意してあるから。」

「何時でもって…先生、持ち歩いてるんですか?」

「また、先生になってる。」

そう言って隣に腰を降ろすと、耳にそっと口づけた。

「だから…止めて下さい!誰かに見られたらどうするんですか?」

「僕は別に構わないけど…それに、もうみんな知ってるよ!」

「はぁ?」

瑠唯の口から間の抜けた声が飛び出す。

「僕が毎日必死に口説いてるのに、原田先生がなかなか首を縦に振らないって…さっきも廊下ですれ違った看護師の子に「頑張ってくださいね!」って励まされた。」

「どうゆう設定なんですか?それ!だいたい誰がそんな事…」

「さぁ〜誰だろう?僕は、知らない。そう言えばさぁ…論文の話し、再開しよう…今夜、僕の家でどう?」

「今夜、僕の家で何するって?」

突然割り込んできた声の方を向くと

「またお前かー滝川…」

「またで悪かったな!で…何するの?」

向かいに腰を降ろした滝川が意味深な顔で二人に迫る。

「論文の打ち合わせだよ!なにか問題でもあるか?」

「大アリだろー。夜、二人でお前の部屋にいて、論文の打ち合わせなんか出来る訳ないだろうが!ベットの中で打ち合わせか?」

「な、なんて事言うんですか?滝川先生!」

「だとしても、お前には関係ない!師長と進くんの三人で、お好み焼きでも食べに行け!」

「だとしてもって…山川先生も止めて下さい!」

「あれ〜根に持ってるんだ…ハブンチョされた事…」

「そんなんじゃない!次はないって事だ!」


「あら〜先生方お揃いで…最近此処の集合率いいですねぇー丁度良かったわーこれ、また沢山作ったから皆さんで食べて下さいね。」

そう言って、またしても清掃のおばちゃんがおいて言ったのは、大量のお萩だった。
その後…ぞろぞろと篠田や三ツ矢達が集まって来たのは言うまでもない。





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