その笑顔を守るために
「年越し蕎麦っていうにはちょっと早くないですか?未だ五時ですよ。」

買ってきた惣菜やらピザやらをさんざん食べて…仕上げに、瑠唯と山川はリビングのソファーに二人並んで、おばちゃんから貰ったお蕎麦を食べていた。

「早いに越した事はないよ!この後、色々やる事あるし…」

何だか目つきがいやらしい。

「先生…や、やる事って…?」

「二人でお風呂入ったりとか?それから…お仕置きとか?…三回目だしね。」

「せ、先生…さっき来て直ぐ…お仕置きって…」

そう…山川の部屋に着いて直ぐ、瑠唯はお仕置きと称してあんな事やこんな事をさんざんされまくって、既にシャワーを浴びている。

「今ので四回目…」

「先…修司さん…こ、このお蕎麦美味しいですよねぇ?作るの上手ですよねー」

「何が?蕎麦茹でるのが?」

「…は、はい!お蕎麦屋さんで食べてるみたいに美味しいです。」

「蕎麦茹でるのなんて、お湯沸かして入れるだけだろ?美味いのは打ちたてだからじゃない?」

「え?だって私がやると硬かったり、ベチョベチョだったりで…」

「それは単に、時間を測って無いだけだろ?そんなに難しい事じゃないよ。まぁ…さっきも瑠唯、汁を割らないでそのまま蕎麦付けようとしてたしな。あれじゃ、しょっぱくて食べられないよ。」

何か手伝うと申し出た瑠唯に蕎麦つゆを用意して、と言ったら濃縮の汁を並々器に入れたのだった。

「瑠唯…自炊とかした事なかったの?今まで食事、どうしてたの?」

「えっと…アメリカに行ったとき、コンビニとかあんまり無いし、デリバリーとかめちゃくちゃカロリー高いのばっかりでうんざりしちゃって…ちょっとだけ自炊、挑戦したんですけど…買ったばかりの鍋やフライパン焦げ焦げにして、やっと出来たものもすっごい不味くて…挙句にボヤ騒ぎまで起こしちゃって…結局諦めました。で、インスタントとかパンとハムとサラダとかで済ませてたら…大野先生が見かねて作ったもの差し入れしてくださったりして…大野先生も凄くお料理上手なんですよ!」

少し話題がそれて、胸を撫で下ろしていた瑠唯だったのだが…

「その前は?日本にいた時…学生時代とかはどうしてたの?」

「二十歳の時に両親亡くすまでは、実家ぐらしでしたから問題なく…一人になってからは…えっと…友人に料理が上手な人がいて…あの…私の実家に下宿する事になって、家賃いらないって言ったら…家賃代わりにって、ご飯作ってくれて…」

「へぇ~じゃあ大学三年時からは、実家で友達と同居してたってこと?」

「え、ええ…まぁ…そうゆう事になります。あの…一軒家で…それなりに部屋もありましたので…その…シェアハウス…みたいな?」

「その友達ってさぁ〜もしかして…男?」

ここまで来て、まずい方向に話しが進んでいることに気付く。

「えっ?…いえ…あの…」

「僕さぁ…噂…聞いたんだよね…」

「噂…?」

「瑠唯がERの長谷川先生の元カノだって…」

その言葉に瑠唯が一気に青ざめて下を向く。完全に墓穴を掘ってしまった。

その様子を見た山川が瑠唯の髪を一房すくい上げて口付ける。

「別に攻めてる訳じゃない…ただ…悔しいだけだ。瑠唯が一度に両親を亡くして、悲しい思いをしている時に、側にいて支えたのが僕じゃなかったって事が…それで?今は?長谷川先生の事…どう思ってる?少しは気になる?」

「………」

「正直に言って…今の君の気持ちが聞いたい…」

「あの…気になるって言うか…申し訳なかったなって…」

「申し訳ない?どうしして?」

「あの時…両親が死んだ時、頼れる親戚とかもいなくって…突然一人ぼっちになって、途方にくれて、寂しくて…そしたら、孝太…長谷川先生が一緒に暮らそうって言ってくれて…あの…それまでも、お付き合いはしてたんです。でも…あの…授業の合間にお茶したり、ランチしたり、休みの日に映画行ったり…そういったお付き合いで…それ以上の事は…未だ十代でしたし…それが一緒に暮らすようになって…あの…」

そこで瑠唯の言葉が止まる。





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