その笑顔を守るために
間もなく長谷川が駆けつけた。その後ろにいた大野を見て瑠唯が目を見開く。
「大野先生…ご一緒だったんですか?」
「ああ…ちょっと厄介なんだろう?人手があったほうがいいかと思ってな。」
「ありがとうございます。お願いします。出来ればこのまま落ち着かせたいんです。オペはもう少し先に延ばしたいので…」
「ああ…聞いてる。この場合、その方がいいだろう。賢明な判断だ。」
その後三ツ矢を含め、四人で懸命な治療が施され、どうにか病状が落ち着いた頃には空が薄っすら白みかけていた。
「大野先生ありがとうございました。三ツ矢くんもお疲れ様。もういいから仮眠取って。」
「はい、じゃあ…そうさせてもらいます。僕、夕方迄担当なんで。」
そう言って三ツ矢は仮眠室に向かった。
「お前ももう帰っていいぞ。休暇中なんだろ?」
「あっ…はい、でも佐々木先生戻るまでいます。」
佐々木は、知らせを受けて駆けつけ、廊下で肩寄せあって蹲っていた若い両親を落ち着かせ、病状の説明をしている。特に母親は産後間もない。早く返して休ませた方が良いだろう。
「先生こそ大丈夫なんですか?
未だ、頭痛や目眩があるんじゃないんですか?」
定期的に診察を続けている瑠唯が大野の顔を覗き込む。
「ああ…だが頻度は日に日に減ってる。今はだいたい一週間から十日に一回程度だ。それも軽いものだ。」
「そうですか。もう少しですね…完治まで…」
「ああ…それよりお前、さっさと帰った方がいいんじゃないか?また、山川ほっぽって来たんだろう?」
「またって…」
「聞いたぞ。クリスマスもすっぽかしたんだろ?」
「先生!そんな話し、誰から聞いたんですか?」
「院長が言ってた。クリスマスに奥さん孝行でホテルのレストランに連れてったら、隣で滝川と師長が子供連れて飯食ってたって。事情を聴いたら、山川が瑠唯とデートに予約入れてたのに瑠唯にすっぽかされたらしいってな。」
「ほんっと、滝川先生ってお喋り!」
瑠唯はふくれっ面で、横を向く。
「誰がお喋りって?」
そこへ長谷川が戻って来る。
「おう…どうした?」
「ええ…ご両親には一旦家に帰ってもらった…お母さんは未だ産後間もないから、休んでもらったほうがいい…淳平も帰って。私、このまま残ってもう少し様子見るから…原田先生もお疲れ様でした。あっ、淳平、原田先生送ってあげたら?帰り、車の運転気を付けてね。」
「ああ…じゃあ、そうするか?」
この大野が、長谷川の言う事を素直に聞いている…しかも淳平?…
瑠唯は驚きの眼差しでマジマジと大野を見た。
「なんだよ!原田!その目は!」
そこへ三ツ矢が飛び込んで来た。
「原田先生!あっ、未だいた!よかった。交通事故による重傷者の搬送要請があって!どこも受け入れ拒否だそうで…でもER、研修医だけで…お願い出来ますか?」
「わかった!行きます!」
瑠唯がERに駆けつける。大野も後に続いた。
「二十代男性…交通事故による頭部損傷、意識レベル3、それと…かなりのアルコール臭がします。」
「付き添いは?」
「いません!」
「わかった!直ぐオペ室用意して!俺がやる!」
大野のその言葉に、瑠唯が目を見開く。
「先生…」
「大丈夫だ!原田!手を貸せ!」
瑠唯は一瞬逡巡すると…
「わかりました!三ツ矢くんも入って!」
「はい!」
外傷性硬膜外血腫…オペ室には大野の器械出し指示の声のみが響いている。瑠唯との間には全く会話がない…目配せもしない。時折瑠唯が三ツ矢に指示を出す。オペは淡々と進む。
そして…四時間にわたったオペが終了した。
「大野先生…ご一緒だったんですか?」
「ああ…ちょっと厄介なんだろう?人手があったほうがいいかと思ってな。」
「ありがとうございます。お願いします。出来ればこのまま落ち着かせたいんです。オペはもう少し先に延ばしたいので…」
「ああ…聞いてる。この場合、その方がいいだろう。賢明な判断だ。」
その後三ツ矢を含め、四人で懸命な治療が施され、どうにか病状が落ち着いた頃には空が薄っすら白みかけていた。
「大野先生ありがとうございました。三ツ矢くんもお疲れ様。もういいから仮眠取って。」
「はい、じゃあ…そうさせてもらいます。僕、夕方迄担当なんで。」
そう言って三ツ矢は仮眠室に向かった。
「お前ももう帰っていいぞ。休暇中なんだろ?」
「あっ…はい、でも佐々木先生戻るまでいます。」
佐々木は、知らせを受けて駆けつけ、廊下で肩寄せあって蹲っていた若い両親を落ち着かせ、病状の説明をしている。特に母親は産後間もない。早く返して休ませた方が良いだろう。
「先生こそ大丈夫なんですか?
未だ、頭痛や目眩があるんじゃないんですか?」
定期的に診察を続けている瑠唯が大野の顔を覗き込む。
「ああ…だが頻度は日に日に減ってる。今はだいたい一週間から十日に一回程度だ。それも軽いものだ。」
「そうですか。もう少しですね…完治まで…」
「ああ…それよりお前、さっさと帰った方がいいんじゃないか?また、山川ほっぽって来たんだろう?」
「またって…」
「聞いたぞ。クリスマスもすっぽかしたんだろ?」
「先生!そんな話し、誰から聞いたんですか?」
「院長が言ってた。クリスマスに奥さん孝行でホテルのレストランに連れてったら、隣で滝川と師長が子供連れて飯食ってたって。事情を聴いたら、山川が瑠唯とデートに予約入れてたのに瑠唯にすっぽかされたらしいってな。」
「ほんっと、滝川先生ってお喋り!」
瑠唯はふくれっ面で、横を向く。
「誰がお喋りって?」
そこへ長谷川が戻って来る。
「おう…どうした?」
「ええ…ご両親には一旦家に帰ってもらった…お母さんは未だ産後間もないから、休んでもらったほうがいい…淳平も帰って。私、このまま残ってもう少し様子見るから…原田先生もお疲れ様でした。あっ、淳平、原田先生送ってあげたら?帰り、車の運転気を付けてね。」
「ああ…じゃあ、そうするか?」
この大野が、長谷川の言う事を素直に聞いている…しかも淳平?…
瑠唯は驚きの眼差しでマジマジと大野を見た。
「なんだよ!原田!その目は!」
そこへ三ツ矢が飛び込んで来た。
「原田先生!あっ、未だいた!よかった。交通事故による重傷者の搬送要請があって!どこも受け入れ拒否だそうで…でもER、研修医だけで…お願い出来ますか?」
「わかった!行きます!」
瑠唯がERに駆けつける。大野も後に続いた。
「二十代男性…交通事故による頭部損傷、意識レベル3、それと…かなりのアルコール臭がします。」
「付き添いは?」
「いません!」
「わかった!直ぐオペ室用意して!俺がやる!」
大野のその言葉に、瑠唯が目を見開く。
「先生…」
「大丈夫だ!原田!手を貸せ!」
瑠唯は一瞬逡巡すると…
「わかりました!三ツ矢くんも入って!」
「はい!」
外傷性硬膜外血腫…オペ室には大野の器械出し指示の声のみが響いている。瑠唯との間には全く会話がない…目配せもしない。時折瑠唯が三ツ矢に指示を出す。オペは淡々と進む。
そして…四時間にわたったオペが終了した。