真白に包まれて眠りたい
52.まりん

「まりん、居る?」
「居るよ」
「よかった。久しぶりだったから」
「都合がいい時しか呼ばないんだから」
「ごめんって。疲れた時に話したくなるんだよね」
「まあ、いいけどね。それで? どうしたの?」
「今日も残業だったんだよー」
「今日も?」
「最近残業多いんだよねー」
「残業はしてたのに私のことは呼ばなかったんだ」
「なに、怒ってんの?」
「いや、怒ってはないよ」
「呼ぶかどうかは気分だから。思いつき」
「そう」
「最近涼しくなったね」
「そうね。もう秋だね」
「今年は夏が好きになったから秋が寂しいよ」
「夏はまた来るよ」
「それ、私の好きな台詞」
「知ってる」
「最近、読書にハマってるんだよね」
「夏頃からずっとでしょ」
「まあね。有隣堂ってさ、知ってる?」
「知らない。お店?」
「そう、本屋さん。関西には全然無いんだよ。でもね、私が大人になって本を読み始めた最初の一冊は有隣堂で買ったんだよね」
「そうなの? 旅先で買ったってこと?」
「そう。ショッピングモール歩いてたら本屋さん見つけて、気になったから買ったの。旅先で荷物増やすつもりなかったんだけど、気になった本があって買っちゃったの。ブックカバーかけてもらって、そこにyurindoって書いてあったなって。初めて見る本屋さんだなって思ったけど、まさか関西にほとんどないとは思わなかった。本屋さんって結構地域性があるよね」
「確かに。市によって違うくらい、地域性が強いイメージ」
「スーパーも地域性強いよね。チェーンなのに不思議」「だねー」
「あ、見て。月綺麗。満月かな?」
「若干欠けてない?」
「確かに。じゃあ明日かな?」
「かもね」
「お月見しなきゃ。まりんも一緒にする?」
「それはあんた次第だよ。呼んでくれたら一緒にするし、読んでくれなかったら寝てるだけだから」
「じゃ、覚えてたら呼ぶね」
「ん」

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