愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「屋敷のなかに魔術師たちが……夫の部屋だけじゃなくあたしの部屋まで捜索されていて」

「まあ、そうだろうな」


 ザマスコッチのことは現行犯で捕まえたし、証拠もきちんと確保した。けれど、過去の事件については状況証拠しかないわけで、本格的な捜査はこれからということになる。家のどこに証拠があるかわからないので、ロザリンデの部屋やものにまで捜索が入るのは当然だ。


「なんで? どうしてそんなことに? ねえ、これからあたし、どうなっちゃうの? ドレスは? 化粧品は? お気に入りの宝石まで全部持っていくって言われて……」

「そんなことは知らん」


 なにが、どうして捜査に必要なのか知る由もなければ、俺にはまったく関係ない。どうでもいい、というと酷いかもしれないが、本気で興味がわかないのだ。


「ねえ、セオドアがいなくなったらあたし、どうしたらいいの?」

「知らん。俺に聞くな」

「俺に聞くな? あなたはあたしの元婚約者でしょう!? もっとあたしに親身になってくれてもいいじゃない! ねえ、あなたの屋敷にあたしを置いてよ! あたし、このままじゃ生活できなく……」

「そんなの、無理に決まってるじゃありませんか!」


 ロザリンデが振り返る。彼女の背後には、怒りに燃えたクラルテが立っていた。


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