【お手紙お返事ぺーパー】8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました。小話
 ルーデンブルグまでの長い距離も、聖獣にかかればあっという間だ。
 リーフェは湖畔にアイラを下ろした。ルーデンブルグの湖は、夜ということもあって静寂に包まれている。湖の奥に人が入らないような森があり、リーフェはかつて、そこに住んでいたのだ。

『じゃあ、私は森を見てくるから』
「えっ、待ってよ。私もそこに行きたいの!」
『森に? でも聖域だよ? 人間を入れていいのかな』

 判断がつかないリーフェは、ドルフをうかがう。

『アイラの気が済むようにしてやればいいだろう。聖域に人間が入ってはならないという決まりなどない』
『そう? まあ、アイラとオリバーなら荒らさないからいいのかな。でも大きな声出さないでね。動物たちが驚くから』
「わかった」
「もちろん!」

 ふたりが揃って頷いたので、聖獣は再びふたりを乗せ、湖の奥の森へと飛び立つ。
 夜の森は、月の光が届きにくい分、湖よりも薄暗い印象だ。
 森の中へ足を踏み入れると、フクロウが警告するように二度鳴いた。

『リーフェだよ。ただいま』

 リーフェが言うと、フクロウが鳴きやむ。リーフェはそのまま、とことこと奥に進んでいった。

「綺麗な空気ね」
「さすが聖域だなぁ」

 オリバーが不安そうに周囲を見回す。動物たちも人間が現れたことで警戒しているようだ。リーフェが一緒だからと様子見の体を取っている。

『私の友達だよ。怖くないよ』

 リーフェが言うと、動物たちは安心したように奥に行く。
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