不器用な神野くんの一途な溺愛
『一言文句言ってやろーかと思ったけど、やめた。失せたわ』


だって、そうだろ。

人形に新入生代表の挨拶は、できねーよ。


もう水に流した。
それで終わり。

そう思っていたが……。


俺が「人形」と言ったばかりに、小野宮はあちこちで「人形」と呼ばれるようになっていた。

いい意味でも、悪い意味でも。

いずれ誰かが「人形」って言っただろ――と思うが、俺の言葉のせいで小野宮がヒソヒソ悪く言われんのは、気分わりぃ。


ま、でも――


『斗真くんの事が好きです!』

『無理』


小野宮も、俺の高校生活を変えたんだ。

お互い様のよーなもんだろ。


――が。


なんの縁があったのか、一緒に交通委員になっちまった……。

3ヶ月前から何も変わってねー小野宮に対して、無性に苛立って、


『何もしゃべらねーんなら帰れば?
あんた、ここにいる意味ねーし』


って言っちまったし……。

すぐに委員長に注意されて、それきりになったが、あの時の顔面蒼白な小野宮は、今にも倒れそうな程だった。
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