不器用な神野くんの一途な溺愛
『地味子がオドオドしてるのってあなたにだけ? もっと周りを見なさい。地味子はね、皆が怖いの。皆が敵に見えるの。暗闇に一人、ポツンと取り残された気持ちになるの』



「(きっとコイツは)」

「ど……ど、ぞっ」

「(この手を俺に拒否されるのが、怖ぇんだろーな)」


あー…………くそ。

副委員長、でけー貸しだからな。


小野宮から飴を受け取る。小さくて細くて白い小野宮の手ごと、俺は飴を掴んだ。


そして――



「小野宮、俺がお前を変えてやる」



自覚したくねぇけど、もうきっと足りねぇんだ。さっきの顔だけじゃ俺は満足しねぇ。

貪欲で悪かったな。
負けず嫌いで悪かったな。

けど人形って言われてるコイツの仮面の下がどうなってんのか、気になって仕方ねぇんだよ。


だから、見せろ。


「特訓するぞ。コミュ障を治して、今日までお前を笑った奴を見返してやれ。

それに、話してぇだろ?
友達とか……兄貴とかよ」


俺が小野宮を見て、小野宮もまた、俺を見る。

「兄貴」という単語を使って顔が歪んだ俺とは反対に、その時アイツの顔は――


「……〜っ」


眩しいくらいに、輝いていた。



*神野 斗真* end
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