追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
妹の婚約に口出しをするなんて、今更すぎるのはわかっているが、できたら早々にこの婚約は取り止めた方が良いのではないかと最近のリティカを見ていてそう思う。
このまま順調に歳を取り、いずれロア様に嫁いだとして、リティカが王妃になることもなければ、彼から信頼され愛される日が来ることもない。
たくさんの時間を投資して、王妃教育も魔法学の勉強もがんばって、武芸まで磨き始めたリティカ。
でも、そんなリティカの努力が実る日は、来ないのだ。これから先、リティカがどれほど努力を重ねたとしても。
「……いっそのこと」
早々に彼が目標としている王太子にならないための道筋を整えて、婚約破棄に持ち込めれば、リティカは自由になれるのではないだろうか?
王妃になれなくてがっかりするかもしれない。
好きになった相手に振り向いてもらえなくて泣くかもしれない。
だけど、それ以上に利用され都合よく使われているのだと、リティカが気づくより前にロア様から妹を取り返せたら。
一時の淡い感情など忘れさせ、リティカは魔術師としてこのままここで一緒に研究を続けることができるかもしれない。
俺は、そんなことを考える。
「怖い顔だな、セザール。そんなに堂々と睨みつけてくれるなよ」
メルティー公爵家とはこれから先も長い付き合いになる予定なんだからとロア様が苦笑する。
「俺は、あなたが嫌いです」
「別にそれで構わないさ。お前は好き嫌いなんて短絡的な感情で相手を選り好み、仕事を放棄したりしないしな」
俺の考えや為人を見透かす年下の王子は、本当に似てない兄妹だな、とそう言って静かに微笑んだ。
「ぷーぅきゅ!!」
「スイ、どうした?」
俺たちの間に流れる微妙な空気を感じ取ったのか、それとも単純にロア様に掴まれていることに嫌気がさしたのか、スイは怒ったように大きな声で一声鳴くと体を発光させる。
一瞬、その大きな光に目がくらんだ隙をついて、スイはまんまとロア様の手から逃げ失せた。
「ははっ、面白い生き物だな。って、コレは?」
スイが消えた廊下には、ノートが1冊落ちていた。逃げるときに落としていったのだろう。
「……また勝手に」
拾い上げた俺は何気なくそのノートをペラペラとめくる。そこには見慣れたリティカの筆跡が綴られていた。
「コレ……は」
俺はそこに綴られていた内容に驚き、言葉を失くす。
「どうした、セザール」
ひょこっと横から覗き見たロア様も、驚いた様子で、息をのんだ。
そこに綴られていたのは、俺の知らない王妃教育の内容。
リティカが受けた、暴言と暴行の記録。
『→子どもの自己申告だけでは、証拠としては薄い。判例に当てはめるなら……』
毎度ポーションで証拠隠滅される状況で、どうすれば、コレを証明できるのか?
そこには彼女なりの考察が書いてあった。
『んーそうですねぇ。資金調達、でしょうかね?』
映像記録水晶の用途について尋ねたとき、そういったリティカの声が耳に蘇る。
「……リティカ」
今日は王城で王妃教育を受ける日だ。
もしこれが本当の事だとするならば、リティカは今この瞬間にもヴァレンティ侯爵夫人に鞭で打たれているかもしれない。
「ふざけるな」
そういったのは自分の声ではなかった。
怒りに満ちた、冷たい声。
隣を見ればぞっとするほど冷酷な目をしたロア様がいて、抑え切れない魔力が彼から漏れ出していた。
「ロア様、いけません」
ロア様は生まれながら陛下譲りの強い魔力を持っている。
このままでは手順を無視した魔法を構築し、何もかも巻き込んで全てを無に帰すまで力任せに魔力を暴走させてしまう。
抑えなくては、と俺が無効化するための術式を詠唱するより早く、
「止めるな、命令だ」
たった一言で、俺の発動仕掛けた魔法を解いたロア様は目の前からいなくなった。
このまま順調に歳を取り、いずれロア様に嫁いだとして、リティカが王妃になることもなければ、彼から信頼され愛される日が来ることもない。
たくさんの時間を投資して、王妃教育も魔法学の勉強もがんばって、武芸まで磨き始めたリティカ。
でも、そんなリティカの努力が実る日は、来ないのだ。これから先、リティカがどれほど努力を重ねたとしても。
「……いっそのこと」
早々に彼が目標としている王太子にならないための道筋を整えて、婚約破棄に持ち込めれば、リティカは自由になれるのではないだろうか?
王妃になれなくてがっかりするかもしれない。
好きになった相手に振り向いてもらえなくて泣くかもしれない。
だけど、それ以上に利用され都合よく使われているのだと、リティカが気づくより前にロア様から妹を取り返せたら。
一時の淡い感情など忘れさせ、リティカは魔術師としてこのままここで一緒に研究を続けることができるかもしれない。
俺は、そんなことを考える。
「怖い顔だな、セザール。そんなに堂々と睨みつけてくれるなよ」
メルティー公爵家とはこれから先も長い付き合いになる予定なんだからとロア様が苦笑する。
「俺は、あなたが嫌いです」
「別にそれで構わないさ。お前は好き嫌いなんて短絡的な感情で相手を選り好み、仕事を放棄したりしないしな」
俺の考えや為人を見透かす年下の王子は、本当に似てない兄妹だな、とそう言って静かに微笑んだ。
「ぷーぅきゅ!!」
「スイ、どうした?」
俺たちの間に流れる微妙な空気を感じ取ったのか、それとも単純にロア様に掴まれていることに嫌気がさしたのか、スイは怒ったように大きな声で一声鳴くと体を発光させる。
一瞬、その大きな光に目がくらんだ隙をついて、スイはまんまとロア様の手から逃げ失せた。
「ははっ、面白い生き物だな。って、コレは?」
スイが消えた廊下には、ノートが1冊落ちていた。逃げるときに落としていったのだろう。
「……また勝手に」
拾い上げた俺は何気なくそのノートをペラペラとめくる。そこには見慣れたリティカの筆跡が綴られていた。
「コレ……は」
俺はそこに綴られていた内容に驚き、言葉を失くす。
「どうした、セザール」
ひょこっと横から覗き見たロア様も、驚いた様子で、息をのんだ。
そこに綴られていたのは、俺の知らない王妃教育の内容。
リティカが受けた、暴言と暴行の記録。
『→子どもの自己申告だけでは、証拠としては薄い。判例に当てはめるなら……』
毎度ポーションで証拠隠滅される状況で、どうすれば、コレを証明できるのか?
そこには彼女なりの考察が書いてあった。
『んーそうですねぇ。資金調達、でしょうかね?』
映像記録水晶の用途について尋ねたとき、そういったリティカの声が耳に蘇る。
「……リティカ」
今日は王城で王妃教育を受ける日だ。
もしこれが本当の事だとするならば、リティカは今この瞬間にもヴァレンティ侯爵夫人に鞭で打たれているかもしれない。
「ふざけるな」
そういったのは自分の声ではなかった。
怒りに満ちた、冷たい声。
隣を見ればぞっとするほど冷酷な目をしたロア様がいて、抑え切れない魔力が彼から漏れ出していた。
「ロア様、いけません」
ロア様は生まれながら陛下譲りの強い魔力を持っている。
このままでは手順を無視した魔法を構築し、何もかも巻き込んで全てを無に帰すまで力任せに魔力を暴走させてしまう。
抑えなくては、と俺が無効化するための術式を詠唱するより早く、
「止めるな、命令だ」
たった一言で、俺の発動仕掛けた魔法を解いたロア様は目の前からいなくなった。