この結婚が間違っているとわかってる
『少しくらい貰ってもいいでしょ。そんなにいっぱいおかずがあるんだから』
『よくねぇよ。これは俺が全部食うんだ。お前なんかに食わせるかよ』
とは言いつつも伊織は小花が次々とおかずを取っていく手を止めることはしなかったし、たまにはおにぎりを分けてくれる日もあった。
高校時代の小花の昼食は伊織のお弁当にだいぶ助けられていた。
ぼんやりと当時を懐かしんでいると、来客を知らせるチャイムが鳴る。
(拓海くんだ!)
小花は急いで玄関に向かい、拓海を自宅に招き入れた。リビングに入った彼はダイニングテーブルにある料理を見て笑顔を見せる。
「美味そう。ハンバーグを作ってくれたのか」
「スープもあるから持ってくるね。座って待ってて」
小花はキッチンに向かった。拓海がきょろきょろとリビングを見回している。
「そういえば伊織は?」
「用事があるみたいで出掛けたよ」
「相変わらず忙しいやつだな」
拓海の前では順風満帆な夫婦を演じている。まさか伊織が女性に会いに行ったとは言えない。でも、どうやら拓海は伊織が仕事の用事で出掛けたと思ったようだ。
コーンスープとご飯をダイニングテーブルに並べて夕食が揃う。いただきますと手を合わせて食事を始めた。