馨子ーkaorukoー
「っっ!!!」
馨子の大きな瞳がこれでもかというくらい見開かれる。
「うそ。嘘よっ!だっておじ様こんなにお元気じゃないですかっ、」
「心臓の病気でな。手術も年齢的に無理らしい。病と年には勝てぬな」
悲しげに微笑む西園寺を前に馨子は泣きながらすがる。
「嫌よっ!おじ様、置いていかないで!!ひとりにしないで!!わたし、おじ様がいなきゃ生きていけないっ」
「馨子…。私だってお前を置いて逝きたくはない。だから今更にはなるが籍を入れよう。そうすれば私が居なくなったあともこの家に住めるし、一生生活には困らないぐらいの遺産も遺せる」
泣きじゃくる馨子を宥めようと抱きしめようとするも、馨子はイヤイヤと抵抗する。
「そんなもの要らないっ!住むところもお金も要らないっ!おじ様がいなきゃ何の意味ももたないわっ」
「馨子。すぐに逝くわけではない。そうだ、まだ体の自由がきくうちに旅行へ行かないか?私の好きな国に連れて行こう。お前は海外にはまだ行ったことがないだろう?」
「…はい」
馨子はスッと静かになった。
西園寺は馨子が覚悟を決めてくれたのだと思い、そこから入籍や旅行の予定をザッと決めてふたりは手を繋ぎ、眠りについた。