本部長は慇懃無礼
真実

真実

「これが蔵見前会長、俺の祖父だ。その隣が今の会長である俺の父親、小池武蔵。俺の父親は愛人の産んだ子だったから苗字も蔵見を継ぐことができなかった。だけどその分力をつけて実力でこの会長の座まで這い上がって来た。強欲さが生かされたのかも知れない。だけど今度は自分の人生だけでなく、俺の人生にも介入しようとして来た」


「どんなことがあったんですか?」


「政略結婚をさせようとしていたんだ、山田さんと」


 京子は驚きを隠せなかった。今の会長とも直接会ったことがないのに自分の存在が知られていたことが不思議だった。


「会長はどうして私のことをご存じだったんですか?」


「君は俺の祖父が亡くなった時、葬式で号泣していた。その姿を見た父が君の美しさを気に入って俺の結婚相手にしようとしたらしい」


「会長は随分と私の個人情報をお調べになったんでしょうね。母が急にお見合い話が来たって言ってたので怪しいとは思ってましたが……」


 小池は少し拗ねてしまった京子が可愛くてつい笑ってしまった。


「笑いごとじゃないですよ。私こう見えてもプライバシーは徹底してますから」


「はいはい。分かりましたよ。まだ続きがあるから最後まで聞いていて。さっきの話に戻るけど、父が普通の社員を俺の結婚相手に選んだのには理由があった。それは子供を産ませたらすぐに離婚をさせて、子供だけを奪うつもりだったんだ」
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