本部長は慇懃無礼
 京子は小池の話を聞いてショックを受けた。女性として利用しようとする小池会長が許せなかった。


「酷い。どうしてそんなことをしようとするの……」


「父は自分の手で後継者を育てたかったらしいんだ。次の代は俺か弟が継いだとしても、その先までは分からない。だからこそ徹底して自分の手で一から育てる為に、歯向かえないような立場の人から選んだんだ。だけど俺はその考えには納得がいかなくて、結局君が絶対に俺を選ばないように仕向けた。だけど本当は一目会った時から君のことが気になって忘れられなかった」


「そうだったんですね。私てっきり最低な人だと勘違いしてました。私のことを守ろうとしてくれてありがとうございます」


「いや、こちらこそもっと慎重に断るべきだった。本当にすまない」


 京子は申し訳なさそうな表情をする小池に近づき、そっと唇を重ねた。


「私、本部長のことが好きになちゃったみたいです」


 小池は京子の腰を引き寄せてさらに熱くキスをした。


 そんな二人の様子を将生は扉の隙間から覗き見していた。


「やっぱり、じいちゃんの葬儀で泣いてた人だ! こないだのタクシーでも裕太の家から出てきてたみたいだし、なかなかやるじゃん兄ちゃん」
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