ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 なんとなくしんみりした空気を変えるように、伯母が「さ、食べましょ!」と明るく言ってテーブル席に向かう。その時、凛くんが私にだけ聞こえるくらいの小声で言葉を紡ぐ。

「この店だけじゃなくて、お前だって愛されてるよ。俺たち皆から」

 ドキリとして目線を上げると、優しい眼差しでこちらを見つめる彼と目が合った。

 純粋に嬉しくて、胸の奥からじんわりと熱くなってきて、私は口元を緩ませて目を逸らす。

「やめてよ、照れる」
「俺のほうが照れてんだよ、ふざけんな」
「自分で言ってなんでキレてるの」

 おかしな凛くんに笑いながらも、嬉しさを隠せなかった。

 ずっと憧れていた幸せな家族。それは一親等の血の繋がりがなくてもできるものなんだと、改めて感じて心が満たされていった。


 遅い昼食を済ませて、午後三時半頃に三人を見送った。一旦家に帰り、準備をしてから羽田空港に向かうらしい。

 私はそのまま店に残り、こういう時しかできない細かい部分の掃除や、備品の整理をすることにした。

 急きょ臨時休業にするというのは、昨日から店の外に貼り紙をしてあるし、常連さんにも伝えた。とはいえ、SNSはやっていないので知らずに来てしまう人もいるだろうから、そういう方々には本当に申し訳ないが。

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