ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 一応気を遣って黙っておこうと思ったけれどこの際はっきり言ってやろうと、私は笑みを消して「あの」と口を開く。

「正直に申し上げますが、あなたのお酒が売れないのは、単に万人受けする味ではないからなんじゃないでしょうか」
「……は?」

 帰ろうとしていた足を止め、怪訝そうに振り返る男性と目を合わせてきっぱり告げる。

「そのお酒、以前飲ませていただきました。とてもキレがよくて、独特の風味があるので年配の方には受けるかもしれません。ただ、少し雑味が気になって。中にはこの雑味がお酒の特徴になるものもありますが、そちらはえぐみが強い気がします」

 味を思い出しながら、私が抱いた率直な感想をありのまま伝える。

 日本酒の美味しさは個人の好みによるので難しいが、やはり誰が飲んでも美味しいと感じる商品が売れるのは間違いない。この人もそれを望んでいるなら、いまいちな部分も正直に教えたほうがいいのではないか。

「お米や酵母の種類を見直してもいいかもしれません。もしたくさんの方に愛される商品にしたいのなら、角をなくしてお米の甘みを感じられるような仕上がりになれば──」
「なんだとぉ?」

 男性の目つきがギロリと鋭くなり、私は口をつぐんだ。

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