ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 彼に対し、次期杜氏らしい男はもうチンピラにしか見えないが、青筋を立てて突っかかっていく。

「脅迫だぁ? それを言うなら、この女は俺が汗水流して作った商品を侮辱してきたんだぞ。名誉毀損で訴えてやっからな!」
「えぇ~……」

 口元を歪ませて引く私。美麗な彼も、心底呆れた様子でため息を吐く。

「名誉毀損の定義も知らないのか……彼女からは貴重な意見をもらえたんだからむしろ感謝するべきなのに。まあ、ここを大衆居酒屋かなにかと勘違いして、無様に喚く酔っ払いには理解できないか」
「はぁぁ!? てめぇ……!」

 華麗な毒舌で怒りが沸点に達したかのごとく、男は拳を握って動き出す。殴りかかるのではと、私はひゅっと息を呑んだ。

 しかし、まったく動じない男性はその手首をぐっと掴み、なぜか自分の目の前に持ち上げた。チンピラさんも「な、なんだよ!?」と動揺を露わにする。

 観察するようにその手をじっと見た彼は、心なしか宥めるような声になって言う。

「こんな手になるまで試行錯誤して作り上げたんだろう? わが子のように手塩にかけた酒を、世間に認めてもらえない悔しさはよくわかる。だが、これで腐って改良しなければ同じことの繰り返しだ。一生いいものは生み出せない」

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