ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 意外にも寄り添うような言葉が紡がれ、私は目を見張った。チンピラさんも急に毒気を抜かれたかのごとく表情が変わる。

 この人も荒れた手に気づいたんだ。観察力に優れていて、冷静に諭す姿に胸を打たれた。

 怖い人ではなさそうだと、ちょっぴりじーんとさえしていると、彼はもう片方の手で自分のスマホを掲げてみせる。

「わかったら顔洗って出直せ。それ以上彼女に難癖をつけるなら、お前を社会的に抹殺する」

 あ、やっぱり組の人かな!?

 再び威圧感のある声色に戻り、今の様子を撮影していたのかと思わせる素振りに、チンピラさんはギクリとする。さっきの言葉もあって張り合う気を失くしたのか、バッと手を振り払った。

「……クソッ。やってらんねぇ」
「あの!」

 踵を返して階段を下りようとした彼を、私は咄嗟に呼び止める。すごく嫌な人だけれど、これを新たな酒造りの第一歩にしてほしくて。

「パワーアップしたあなたのお酒、また飲めるのを楽しみにしていますから。応援しています」

 わずかに目を見張った男性は、舌打ちしただけでなにも言わずに私たちに背を向けた。

< 23 / 249 >

この作品をシェア

pagetop