ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 皆がぞろぞろと帰宅していく中、私はロビーのソファに座って史悠さんを待つ。しばらくして出てきた彼は、私を見つけるときりりとした表情を崩して穏やかに微笑んだ。

 隣に並んで歩き出すと、まだ残っていた社員たちはにんまりとして私たちに挨拶をする。今だけじゃなく、史悠さんのスピーチの後からこんな感じだ。

 照れ臭くて俯き気味になりつつ、小声で言う。

「史悠さんが宣言してくれたおかげで、皆の見る目が変わってちょっと恥ずかしいです」
「俺たちはなにも変わってないけどな」

 確かに、私たちは最初から愛し合っているのに、周りが誤解していただけだ。ふふっと笑い、言おうと思っていたことを伝える。

「史悠さん、ごめんなさい。ずっと子どもみたいなヤキモチを妬いていて」
「ああ、いいんだよ。妬かせたかったのも多少あるし」
「もう……。でも、ありがとうございました。史悠さんに愛されてるって実感できてすごく嬉しかったし、自信がつきました」

 彼は私を見下ろしたものの、少し照れたように目を逸らしてしまった。

 そしてエレベーターに乗り込んだ彼は、一階ではなく客室がある三十五階のボタンを押す。まだ帰らないのだろうか。

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