ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 これは俺が思いついたばかりで、まだ会社のほうとはなにも話を詰めていないが、とりあえず花菱さんの反応を窺っておきたい。若者の育成に協力的な彼なら、この提案に魅力を感じてもらえるのではないだろうか。

「どうでしょう。うまくいけば、いい後継者が見つかる可能性もあるかと」

 呆気に取られた様子で耳を傾けていた花菱さんは、腕を組んで唸り始めた。ものすごく悩んでいる。

「いやぁ~、それなら確かにできなくなさそうだが……そんなにうまくいくかねぇ」
「他になにかお望みがあれば、できる限りお聞きします」

 なるべく花菱さんの希望に沿う形にしたいと思いながら言うと、彼は「他の望みか……」とため息交じりに呟き、苦笑をこぼす。

「あんたの提案に不足しているところはないと思うよ。あとは俺のやる気次第だろ。だが、最近どうもいろんなことに身が入らなくてな」

 やや表情を曇らせる彼が心配になり、遠慮がちに問いかけてみる。

「体調が優れないとか……ですか?」
「俺は大丈夫なんだが、娘がな。がんの検査で引っかかっちまったらしい」

 さらっと口にされたものの、その内容は重苦しいもので俺は口をつぐんだ。

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