ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「まだ要精密検査って段階だから、がんだって確定したわけじゃない。それでも心配で、いろいろ手につかなくなるんだ。久々に連絡してきたと思ったらそんな報告だったんだから、たまんねぇよ」

 口元を歪ませる彼の気持ちが、痛いほど伝わってくる。

 自分の子供が決して軽くはない病気かもしれないと知ったら、いてもたってもいられないだろう。花菱さんがなかなか煮え切らないのは、本当に気持ちの問題だったのだ。

「俺が望むのは仕事のことじゃなくて、娘と孫の幸せだよ。親子仲がよくならないまま、あの子が重い病気になったらって思うと……」

 吐露される彼の心情に耳を傾けている最中、気になる内容が含まれていたのでつい反応してしまう。

「娘さんとお孫さんに、なにかあったんですか?」

 立ち入ったことだろうかと思いつつ尋ねると、花菱さんは暗くなっていた表情を崩して苦笑いする。

「あーわりぃわりぃ。社長さんに聞かせる話じゃなかったわ」
「よければ聞かせてください。花菱さんの気持ちも少しはラクになるかもしれませんから」

 俺がこんな風に返すとは意外だったのか、彼はキョトンとした。

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