ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「この子が小さい頃に、父親が事故で亡くなったんだ。依都はほとんど覚えていないだろうが、娘は相当ショックを受けて……ノイローゼになって育児放棄しちまって、依都に十分な愛情をかけてやれなかった」

 彼女の生い立ちは、とても重く悲しいものだった。写真の中で咲いている明るい笑顔からは想像がつかない。

「娘は俺たちに依都を預けたまま、どこかへ行って帰ってこなくなった。だから、この子は俺と女房とで育てたようなもんさ」
「それで、ふたりは今も疎遠に……?」
「ああ。娘はノイローゼからうつ状態になって、病院に通ってた時期が長くてな。バツイチの女友達が支えてくれたみたいでなんとか立ち直れたんだが、依都と会うとまた戻っちまうんじゃないかって心配もあって会えずじまいだったんだ」

 花菱さんは悲しみを露わにして、ずっと自分の中にしまっていたのであろう事情を話し続ける。

「娘は治ってからひどく後悔していたよ。でも、今さら自分には合わせる顔がないと思ってるらしくて、俺にも依都にも会おうとしないんだ。だから、依都はなおさら娘を憎んでいるかもしれない」

 自分を捨てたも同然の母親か。憎しみを抱いてもおかしくはないし、自分がその立場だったら少なからず恨むだろうなと思う。

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