ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「花菱さん、あなたのお孫さんは唎酒師の資格をお持ちですか?」
《ああ、持っているが……それがどうした?》

 やはり例の女性が依都さんだと確信し、改めてこう提案する。

「こうするのはどうでしょう。あなたの娘さんとの仲を修復させるべく、私が依都さんに働きかけるんです」
《……は?》
「あなたが望む、親子ふたりの幸せのために私も尽力します。ですから花菱さんも、酒米の件を引き受けていただけませんか?」

 シンプルな交換条件を提案すると、花菱さんは数秒の間を置いて《はぁぁ~!?》と声を上げた。

 唎酒師の資格を持っているくらいなのだから、依都さんも日本酒が好きに違いない。俺と年齢もたいして離れていないから話が合いそうだし、単純に〝料理にぴったりの日本酒を選んでくれる〟という彼女に興味がある。

 何度か店に通ってある程度距離を縮められたら、親子仲を修復する気になるよう説得できるのではないか、と算段したのだ。花菱さんの心を動かすにはこれが一番ではないかと。

 俺の考えをかいつまんで伝えると、花菱さんはこの間以上に唸って悩み始めた。受話器を持って悶える彼の姿が目に浮かぶ。

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