ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
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花菱さんとの約束を果たす第一歩にするべく、俺は今日しいじにやってきたのだ。とりあえず今日のところは、依都さんがどんな人物なのかを観察し、あわよくば少しだけ会話をして俺の存在を覚えてもらえれば上出来だと思っていた。
なのに、まさかあっという間に惹かれてしまうとは。
プライベートで日本酒についてあそこまで語れる女性は今までにいなかった。貴重な存在と出会えたことが嬉しかったのもあるが、それ以上に彼女の落ち着いた空気感や愛らしい笑顔、俺を怖がらず向き合ってくれる姿に心を奪われた。
ひと目惚れなんて経験はなかったし、自分はそんなに簡単に落ちるような男ではなかった。一気に波にさらわれるようなこの感覚は初めてで、正直戸惑っている。
「あの子に会うのは仕事のためなんでしょう? あんまり気を持たせるようなことをしたら……」
俺の当初の目的を知っている波多野にそう言われ、どうなんだと自問自答する。
今抱いている感情を恋と呼ぶには早すぎる気がするが、少なくとも義務や責務のような感覚はどこかへ消えてしまった。