ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「彼はずいぶん君を溺愛しているみたいだな」
「そんなんじゃありませんよ! ただ過保護なだけです。私の境遇を知っているから」

 ぴくりと反応して依都を見下ろす。花菱さんから聞いてはいるものの、彼女自身の口からも話してもらいたくて「境遇?」と反芻してみた。

 円柱の水槽の前で足を止めた彼女は、ふわふわと浮かぶくらげを見上げて語り出す。

「幼い頃に父が亡くなって、母も私を置いて出て行ってしまったんです。祖父母がいたから生きてこれたようなものですよ。上京してからは、凛くんたち家族がすごくよくしてくれて。人には恵まれているなって思います」

 穏やかに微笑んではいるが、その奥に寂しさが秘められているのがわかって心苦しくなる。

「……そうか、つらかったな。お母さんは、今どこにいるか知っているのか?」
「新潟県内にいるみたいですが……詳しくはわかりませんし、知ろうとも思いません。あの人がなにをしていようが関係ありませんから。母だって私がいなくて清々してますよ、きっと」

 水槽を見上げてはいるが、その綺麗な瞳にくらげは映っていないように見える。やはり依都は、母親に対して負の感情が大きいようだ。

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