ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 凛くんは「あー腹減った」とひとりごちて和帽子を取る。

 長めの髪を後ろでひとつに縛っているスタイルが露わになり、セットしていた眺めの前髪がひと束はらりと落ちた。それがなんともセクシーなのだが、本人はまったく意識していない。

 顔立ちも彫りの深いワイルド系イケメンなので、『凛太朗さんにはいつ会えますか!?』と女性客に聞かれることもしばしば。

 彼がカウンター内に立つと、ドラマの撮影でもしているのかと思うくらい華があるし、落ち着いた話し方やニヒルな笑みで女性たちを虜にしている。

 が、しかし。素の彼はそんなにカッコいい大人の男性というわけでもなく……。

「お前、巷で有名になってるぞ。〝依都が薦める酒は必ず売れる〟って。すごいじゃん、伝説の女じゃん」
「なにそれ、どこで聞いてきたの?」
「ヒモトのおっちゃん」
「巷じゃないね、それ」

 ドヤ顔をしている凛くんに、私はすかさずツッコんだ。ヒモトの店主のおじさんが調子よく言っていただけで、有名になっているわけないでしょ。しかも伝説の女ってなによ。

 凛くんは気を抜いた瞬間に発言がちょっと残念になるのだ。黙っていればいい男なのに。

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