ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「いいの?」
「ぜんっぜん平気。ここから閉店までそんなに人来ないから。依都ちゃんがこんなに悩んでんの初めてな気がするし、そっちのほうがほっとけないっしょ」
「そんなこと言って、自分が飲みたいだけじゃないの」
「あれ、バレたー」

 あっさり認める彼女に笑いがこぼれる。茶化してしまったけれど、本当に私を心配してくれているのだとわかっているので、「ありがとね」とお礼を言った。

 雫は裏表がないあけっぴろげな性格で、一緒に悩んだり笑ったり泣いたりしてくれる優しい子なのだ。彼女の仲間も似たタイプが多いみたいだし、ギャルに悪い子はいない気がする。

「準備するから、これ食べて待ってろし」と、雫はレジの脇に常備している棒のついたキャンディーを差し出す。さくらんぼ味のそれをありがたくもらい、包み紙を取りながら彼女の気遣いに感謝した。

 おじさんも快く送り出してくれたので、厚意に甘えてヒモトから徒歩十分の場所にある立ち飲み屋にやってきた。昭和の居酒屋っぽいレトロな雰囲気で、立ち飲みだけでなく外に座れる場所もあり、今日も会社帰りの人たちで賑わっている。

 圧倒的にサラリーマンが多い中、私たちもひとつの小さなテーブルを囲んで飲み始めた。わりとよく来るので、おじさんたちの中にも普通に交ざれる。

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