銀河特急777 銀河周遊編 心惑う惑星間旅行 源太郎は何を見たのか?
 火星へ向かっているアストロライナーの下を555号 オルナス5号が通り過ぎて行った。
緑色の車体に青と黄色の帯を締めた流線型の特急である。 マゼランを経由してアンドロメダステーションに向かう循環特急だ。
 地球では何をしているのだろう? 母さんはもう寝ているかな?
妹は趣味のスカイダイビングで世界を飛び回っている。 時には表彰台に上ると言うから大したものだ。
 「俺なんてミニカーで遊ぶのが精一杯だったのになあ、、、。) 苦笑しながら窓の外を見詰める。
寝ても覚めても景色は変わらない。 変わるのはアニーが着けているエプロンくらいだ。
そのままで1年が過ぎてしまいそうな気にもなる。 けれどまだまだ旅は始まったばかりだ。
 朝なのか昼なのか、それすらも分からないままにレールの響きに身を任せている。 席に戻っても話す人すら居ないのだから暇さえ有れば食堂車にやってきてコーヒーを飲んでいる。
「データ集積車に行かれたことは無いんですか?」 「無いなあ。 だってそんなに面白い情報は無いだろう?」
「とんでもない。 この宇宙の隅から隅までのいろんな情報が集まってますよ。」 「そうなの?」
「パスを持っていれば入れますから行ってみてください。」 アニーはニコッと笑った。
 そんなわけで源太郎はデータ集積車に寄ってみることにした。 入り口を入るとあの男が立っていた。
(何処かで見たことが有る人だなあ。) そうは思ったが思い出せないまま源太郎は中へ入った。
 壁にはパネルがぎっしりと並んでいて中央にスーパーコンピューターが置いてある。 そんな殺風景な部屋である。
「どんな情報が詰まってるんだろうなあ?」 検索パネルを開いてみる。
 銀河中央環状線の歴史とか銀河高速線の概要とか、宇宙の成り立ちとか、惑星の今の様子とか、、、。
検索するだけで頭がいっぱいになってしまった源太郎は溜息混じりに部屋から出てきた。

 「こちらアンビートル惑星連帯環状線。 武装集団に襲撃された! 救援を乞う!」 「こちら運行管理本部。 銀河高速警備隊を向かわせる。」
銀河ステーション オリエントコーダの警備隊本部から救援列車が出発した。 「これよりコスモワープに入る。」
「n628-295へジャンプせよ。」 「了解。」
 アストロライナーが火星ステーションを目前にしている時、アンビートルでは急行列車が武装集団に狙われていた。 アンビートルはゴールドダイヤモンドが産出されているのだ。
この資源はアンビートルにしか無い貴重品で武装集団なら誰でも喉から手が出るくらいに欲しがる物である。 だからこの路線を通る列車にはゴールドダイヤモンドを積載した貨車が必ず連結されている。
 中には裏取引をしてその貨車だけ宇宙空間に放り出していく機関士が居る。 どちらがいいかは迷う所である。

 源太郎はデータ集積車から食堂車へ戻ってきた。 「どうでしたか?」
「やりたいことが多過ぎて二日や三日じゃあ足らないね。」 「そうですか。」
 アニーはテーブルを拭きながら源太郎の顔を覗いた。



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