一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
「このホテルには化石があるって知ってる?」
私は小手鞠さんの顔を見た。彼はいたずらっぽく私を見返す。
「ロビーの柱の大理石にね」
「大理石に?」
「大理石は貝殻などが水底に積もって石灰岩になり、それがマグマなどの熱で変化したものだ。だから時として化石を含んだ大理石ができるんだ。帰りに見ていこう」
小手鞠さんは話がうまくて、私の心を解きほぐしていった。個室だったから周りの目を気にせずにすみ、緊張が和らいだ。
ダメだ、好きになっちゃダメだ。
私は自制を心がける。
だけど、小手鞠さんの甘い笑顔は、作ろうとする壁をすぐに崩れさせてしまう。
私ってこんなに惚れっぽかったっけ。
私の心は、きらきらした輝きとともに踊り続けていた。
翌日、久しぶりに晴れやかな気持ちで出社した。
小手鞠さんにはまた会いたいと言われた。機会があれば、と濁した。連絡先の交換は固辞した。
彼は社長で、自分はしがない営業。住む世界が違うし、運命などではないし、もう会わない方がいいと思った。
久々に心が浮き立つ時間を過ごせた。それだけで充分だ。
「せんぱーい。昨日はひどいですぅ」
私を見つけたとたん、わざとらしく頬を膨らませ、鮫島さんが言う。
「アルファの社長が知り合いだなんて一度も言ってくれなくってぇ。私たち親友なのにぃ」
出た、都合がいいときだけの親友呼び。
最初はわかってなくて、何度もふりまわされた。それほど慕ってくれるのなら、と頼みを何度も聞いた。だけど彼女は礼を言うどころか些細な不備を見つけては文句を言うのだ。掃除を代わったらまだゴミが落ちてましたよぉ、と言う。お茶出しをしたら誰にでもできることなのにはりきっちゃってぇ、と言う。
「紹介してくださいよぉ」
昨日こっぴどく切り捨てられたのにすごい、と私はあきれた。と同時に、いたずら心が湧いてくる。
「無理。私の彼だから」
鮫島さんはあっけにとられたあと、むっとした表情になった。
私は小手鞠さんの顔を見た。彼はいたずらっぽく私を見返す。
「ロビーの柱の大理石にね」
「大理石に?」
「大理石は貝殻などが水底に積もって石灰岩になり、それがマグマなどの熱で変化したものだ。だから時として化石を含んだ大理石ができるんだ。帰りに見ていこう」
小手鞠さんは話がうまくて、私の心を解きほぐしていった。個室だったから周りの目を気にせずにすみ、緊張が和らいだ。
ダメだ、好きになっちゃダメだ。
私は自制を心がける。
だけど、小手鞠さんの甘い笑顔は、作ろうとする壁をすぐに崩れさせてしまう。
私ってこんなに惚れっぽかったっけ。
私の心は、きらきらした輝きとともに踊り続けていた。
翌日、久しぶりに晴れやかな気持ちで出社した。
小手鞠さんにはまた会いたいと言われた。機会があれば、と濁した。連絡先の交換は固辞した。
彼は社長で、自分はしがない営業。住む世界が違うし、運命などではないし、もう会わない方がいいと思った。
久々に心が浮き立つ時間を過ごせた。それだけで充分だ。
「せんぱーい。昨日はひどいですぅ」
私を見つけたとたん、わざとらしく頬を膨らませ、鮫島さんが言う。
「アルファの社長が知り合いだなんて一度も言ってくれなくってぇ。私たち親友なのにぃ」
出た、都合がいいときだけの親友呼び。
最初はわかってなくて、何度もふりまわされた。それほど慕ってくれるのなら、と頼みを何度も聞いた。だけど彼女は礼を言うどころか些細な不備を見つけては文句を言うのだ。掃除を代わったらまだゴミが落ちてましたよぉ、と言う。お茶出しをしたら誰にでもできることなのにはりきっちゃってぇ、と言う。
「紹介してくださいよぉ」
昨日こっぴどく切り捨てられたのにすごい、と私はあきれた。と同時に、いたずら心が湧いてくる。
「無理。私の彼だから」
鮫島さんはあっけにとられたあと、むっとした表情になった。