一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
私は思わず顔をそむけた。
「あ、ごめん」
辻谷さんは謝罪して体を離す。が、そわそわして落ち着かなくなっていた。
「香水は使ってません。帰りましょう」
私が駅へ向かって一歩を出すと、辻谷さんは私の手を掴んで止めた。
「君に言いたいことがあって」
嫌な感じだった。言いたいことがあるというわりにはもじもじして言い出さない。
こんな人だったろうか、と私は辻谷さんを見る。
つい最近まで、爽やか好青年だと思っていた。
だけど今は妙に縮んで見える。
優し気だと思っていた顔は、頼りなげに見えた。
スマートな体型は貧弱に見えた。
「俺、君のことが好きみたいで」
みたい、に私はひっかかる。自分の気持ちすらあやふやなのか、この人は。
「つきあってほしい」
私は目をしばたいた。
「鮫島さんと付き合ってるんですよね?」
本人がそう言っていたのに。
「あの子とは……一晩のあやまちだ」
唖然とした。告白の直後なのに関係を認めた。正直といえば聞こえは良いが、誠実さなどかけらもない。
「彼女にはきちんと断るから!」
辻谷さんは慌てて付け足した。
私はあとずさった。
こんな人だったなんて。
「ダメかな」
窺うように私を見る。
「ほかに好きな人がいるんです。ごめんなさい」
小手鞠さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。
「君は俺が好きだと思ってたんだけど、うぬぼれだったかな」
辻谷さんが自嘲気味に笑う。前ならきっとときめいたであろう陰のある笑み。だが、今は卑屈にしか見えない。
「蕾未ちゃんに言われたんだ。君が俺の好みを知りたがってるって。だからチョコレートが嫌いっていったら君はチョコを食べなくなった。ロングは好きじゃない言ったら切って来た。おしゃれすぎる人は苦手だと言ったら、君は地味な服装になっていた」
また唖然とした。鮫島さんはすべて真逆を伝えていたのだ。
「あ、ごめん」
辻谷さんは謝罪して体を離す。が、そわそわして落ち着かなくなっていた。
「香水は使ってません。帰りましょう」
私が駅へ向かって一歩を出すと、辻谷さんは私の手を掴んで止めた。
「君に言いたいことがあって」
嫌な感じだった。言いたいことがあるというわりにはもじもじして言い出さない。
こんな人だったろうか、と私は辻谷さんを見る。
つい最近まで、爽やか好青年だと思っていた。
だけど今は妙に縮んで見える。
優し気だと思っていた顔は、頼りなげに見えた。
スマートな体型は貧弱に見えた。
「俺、君のことが好きみたいで」
みたい、に私はひっかかる。自分の気持ちすらあやふやなのか、この人は。
「つきあってほしい」
私は目をしばたいた。
「鮫島さんと付き合ってるんですよね?」
本人がそう言っていたのに。
「あの子とは……一晩のあやまちだ」
唖然とした。告白の直後なのに関係を認めた。正直といえば聞こえは良いが、誠実さなどかけらもない。
「彼女にはきちんと断るから!」
辻谷さんは慌てて付け足した。
私はあとずさった。
こんな人だったなんて。
「ダメかな」
窺うように私を見る。
「ほかに好きな人がいるんです。ごめんなさい」
小手鞠さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。
「君は俺が好きだと思ってたんだけど、うぬぼれだったかな」
辻谷さんが自嘲気味に笑う。前ならきっとときめいたであろう陰のある笑み。だが、今は卑屈にしか見えない。
「蕾未ちゃんに言われたんだ。君が俺の好みを知りたがってるって。だからチョコレートが嫌いっていったら君はチョコを食べなくなった。ロングは好きじゃない言ったら切って来た。おしゃれすぎる人は苦手だと言ったら、君は地味な服装になっていた」
また唖然とした。鮫島さんはすべて真逆を伝えていたのだ。