一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
近くの公園は、いつも通り人気がなかった。
「なんてこと言うんですか!」
私が文句を言うと、小手鞠さんは悠然と笑った。
「先にあの子にそう言ったのは君だろう? 信じてないようだったから既成事実にしただけだ。俺としては変な虫が君に寄らなくなって一石二鳥だ」
私は口をぱくぱくさせた。が、何も言葉が出てこなかった。
「さっきも言ったが、つきまとわれて困っている。俺のためにも君が恋人だと言ってくれないか」
またあの子のせいで! と腹が立ってきた。
いつもいつも、鮫島さんのしりぬぐいをさせられるのは私だ。
仕事を押し付けられ、渡辺さんに文句を言われ続け、さらに今日は小手鞠さんにとんでもないことを言われた。
「あの子の責任はあの子にとらせて! 私におしつけないで!」
「あーあ。怒らせちゃった」
森下さんが呑気に笑う。
小手鞠さんと私が睨みつけると、森下さんは肩をすくめた。
「そんなつもりはなかったが、口実にはしたな。君に不誠実だった。すまない」
意外に素直に謝られて怒りが行き場を失った。口をへの字に曲げ、花壇の花を見る。
今日も可憐に咲き誇っていた。
落ち着け自分、と深呼吸した。
「花、好きなの?」
ふいに聞かれた。優しい声だった。
小手鞠さんを見ると、にこっと笑った。
どきっとして、慌てて顔を伏せる。
「川沿いにもかわいい花が咲いてるんですよ」
「そうなんだ。君と一緒に見たいな。そうだ、うちの会社は植物園も持っているんだ。ぜひ来てほしい」
「機会がありましたら」
私はそう言って花を見続けた。
「検査は行った?」
急に話が変わって、またどきっとした。