一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
 時間はぎりぎりだったけど、なんとか間に合った。
 思ったより大きな船だった。ディナークルーズにも使用されている船だという。
 乗り込んで、ほっと息をつく。
「今度はもっとゆっくり来たいな。ディナーも一緒に。ああ、水族館もいいし、テーマパークもいいな」
「子供みたい」
 はしゃぐ姿に私が笑うと、小手鞠さんも笑った。
「いいじゃないか。君と行くならどこでも全部きっと楽しい」
 いつもはっきりと言ってくれるのが、清々しい。
 海風は寒かったが、しばらく二人で景色を眺めていた。埋立地に囲まれた中を船はゆったりと進み、徐々に街の灯りが遠ざかっていく。
 寒さに負けて一度船内に入った。彼は個室の休憩室を用意してくれていた。
 レインボーブリッジにさしかかったあたりでまた外に出た。甲板はさきほどより見物客が増えていた。
 あれがレインボーブリッジだよ、と指を差されて、私はぽかんとした。
「レインボーじゃない」
 少しショックを受けた。白っぽいライトアップだった。
「曜日やイベントによって違うみたいだ。また来ようか」
私は曖昧に笑ってごまかした。少し切なかった。
 レインボーブリッジの奥にスカイツリーも見えた。
 スマホを出して撮影した。
 私が二人の写真を自撮りしようとすると、小手鞠さんがスマホを受け取って撮影してくれた。
「俺も撮ろうかな」
 スマホを出して、小手鞠さんが撮影する。
 画面の中の自分が幸せそうで、私はなんだかこみあげてくるものがあった。
 これも、明日までのことだ。
 船は橋の下をゆっくりと進む。
 私は小手鞠さんに涙を気付かれないように橋を見上げた。
 白く照らされたその橋は、とても迫力があった。荒々しく無骨で大きな鉄骨。無機質で、寒々しく見えた。

 橋を通りすぎると、船はUターンして帰路につく。
 東京タワーも見える、と喜んでいたときだった。
 見知った顔を見つけ、私は息をのんだ。
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