一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
 鮫島さんも私も辻谷さんも山橋さんも、同じく批判し、悪口を言う。
「悪い、嫌なことを思い出させたか」
「大丈夫」
 ベータだったはずの自分がオメガで。
 オメガだったはずの鮫島さんがベータで。
 アルファだったはずの辻谷さんがベータで。
信じていたいろいろなことがひっくり返されて、混乱してはいた。
「あの女性、君に憧れていたんだろうな」
 鮫島さんのことだ、とわかった。
「俺にはそう見えたよ。たとえば、仕事しかできない、と言うのは君が仕事ができるのがうらやましいからだ。憧れて嫉妬して。それが嫌がらせになってしまった」
 考えたこともなかった。自分に憧れられる要素があるとは思えなかった。
「君は自分の魅力をわかってないようだ」
 小手鞠さんはちらりと私を見て微笑した。
 かあっと顔が熱くなった。
「そういえば、おば様が来店されて」
 話題を変えると、ああ、と小手鞠さんは頷いた。
「迷惑をかけてすまない」
「いえ、口添えありがとうございます。相談して、お持ちの土地にはビルを建てて貸し出すことになりました。ご満足いただけたようです」
「君の人徳だな」
 彼はまた微笑して、結局私は顔をさらに赤くした。
 植物園につくと、従業員用の入口から入った。
 植物の世話のために、最低限の人は出勤しているようだった。
 ゆっくりと花を見て回り、写真をたくさん撮った。
「今日の君は一段ときれいだ」
 私の写真をとるとき、小手鞠さんはそう言った。私は照れたが、嬉しかった。
 ひさしぶりにオシャレをがんばった。彼の買ってくれた薄い緑のワンピースを着て髪を巻いた。プチプラの新色化粧品を買い、爪には薄いピンクのネイルポリッシュをぬった。ついでに下着も新しくした。買うときには、下心じゃない、新しい気持ちになりたいだけ、と自分に言い訳していた。
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