一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
 一緒に園内を周る。
 リーフレットを見ると、園は大きくわけて薬草コーナーと鑑賞用植物コーナーにわかれていた。観賞用植物コーナーはさらに分かれ、花が咲いているコーナーもあれば、サボテンの温室もあった。
 季節のコーナーは花々でにぎやかだった。
 バラは瑞々しくきれいだし、サルビアは朱色が鮮やかだし、まっすぐに伸びたグラジオラスも美しい。日日草(にちにちそう)は可憐だし、千日紅(せんにちこう)はまるっこくてかわいい。ブーゲンビリアも百日紅(さるすべり)も華やかだ。
「広さがないから、大規模に芝桜やネモフィラやコキアを植えることはできないけど。きれいだろう?」
「素敵です」
 私は顔を輝かせて答えた。
 私はいちいち写真を撮り、花の説明を読み、小手鞠さんの笑顔に和んだ。
 薬草コーナーでは、天南星(てんなんしょう)を見て驚いた。
「私の名前です」
「俺も最初はびっくりしたよ。漢方の名前だったから」
 天南星に菜をつければ私の名前だ。
 花はちょうど終わった頃だった。
 説明とともに載っている写真の花は細長かった。カラーの花を緑にしてもっと引き伸ばして上に葉っぱをかぶせたような見た目だった。秋になるとずんぐりしたとうもろこし状の赤い実をつけるらしい。
 漢方に使われるのはこの実ではなく塊茎(かいけい)だ。ジャガイモなどのように、地下茎の一部が栄養を蓄えて大きくなったものだ。写真ではポップコーンとマッシュルームを足して割ったような見た目をしていた。たんや咳の改善に使い、五十肩にも効果があるとされる。
「もっとかわいい花が良かった」
 落胆する私を見て、小手鞠さんは笑った。

 ログハウス風の喫茶店もあったけど、休園日なので営業していなかった。
 テラスは解放されていたので、そこで休憩させてもらった。
 テラスからもきれいな花々が咲いているのが見えた。
 時間をかけて見て回った最後に、小手鞠さんはようやく数十年に一度咲くというアオノリュウゼツランに案内してくれた。
「ここだよ」
 私はキョロキョロと周りを見回した。蘭らしきものは見当たらなかった。
「これだよ」
 苦笑混じりに指さされ、私は口をあんぐりと開けた。
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