狼上司と秘密の関係
「菊池さん歩けますか? 救急車、呼んだほうがいいですか?」


それよりもまずは他の人に知らせるのが先だろうか。
悩んでいると大和の腕が千明の腕を掴んできた。

痛いほどに捕まれで千明は目を見開く。
「菊池さん?」
覗き込んだ大和の目が怪しく光る。

え……?
千明は息を止めてその目を見つめた。
怪しく銀色に光るその目はいつもの大和の目じゃなかった。

大和の目は黒目がちで、いつも少し潤んでいる。
クリッとして大きくて、大和の30歳という年齢を隠してしまうような愛らしい猫目は、今はするどくつり上がっている。

しいて例えるならそう、まるで狼みたいな目をしている。
そう考えて背筋がゾクリと寒くなった。
菊池さんの目が狼の目だなんて、私なにを考えてるの?
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